2016年3月に提供が始まった、VCEのハイパーコンバージドインフラストラクチャ「VxRail」。従来のVCE製品よりも幅広いユーザーに向けて提案を図るため、EMCのパートナー網を通じた販売活動を行う。ハイブリッドクラウド時代において、パートナーにとっては顧客との関係継続・強化に役立つ製品になるという。(日高 彰)
VCEはコンバージドインフラの草分け的存在である「Vblock」を主力製品とし、VCEの販売チャネルを通じて販売していたが、リモート拠点や中堅・中小向けを想定した今回のVxRailでは、さらにEMCパートナー経由での販売も行うのが特徴だ。3月に行われたVxRailの国内発表会では、ディストリビュータとしてネットワールド、ソリューションプロバイダとしてネットワンシステムズがゲストとして招かれていた。両社ともEMC製品の取り扱いで豊富な実績をもつパートナーで、まずはこの2社の販路を通じて国内にVxRailを提供する。
実は、EMCは昨年5月から、自社ブランドのハイパーコンバージドインフラ製品として「VSPEX BLUE」を日本市場でも販売していた。その中身は今回のVxRailと共通する部分が多いのだが、ハイパーコンバージド製品の特徴であるシンプルさを追求するため、CPUやストレージの構成に選択肢がなかった。VxRailではCPU、メモリ、ストレージの異なる複数モデルが用意され、最小構成価格が750万円からとより安価になったほか、ストレージをオールフラッシュ構成としたモデルも用意される。パートナーにとってもより提案しやすい商材になったといえるだろう。

小川高寛
ハイパーコンバージド
アプライアンス リード EMCジャパンでVxRail事業を担当する小川高寛・ハイパーコンバージド アプライアンスリードは、「リモート拠点のITインフラはパブリッククラウドへ流れる傾向があるが、オンプレミスの資産すべてをクラウドに置き換えられるわけではない。オンプレミスでもIaaSのように簡単に運用できる基盤が求められている」と指摘し、ハイパーコンバージドインフラはまさに今のITニーズにマッチした製品だと強調する。
ハイパーコンバージド製品は、顧客に対して柔軟性やコストメリットを提供する一方、パートナーにとっても、クラウド時代において顧客との関係を維持・強化するためのツールとして活用できる。確かに、オーダーメードでつくり上げるITインフラに比べれば、ハイパーコンバージドインフラは安価な商材だ。しかし、パブリッククラウドへの“離脱”を検討する顧客に対して、ハイパーコンバージドインフラがもつコスト面・運用面でのメリットを伝えられれば、顧客を自社につなぎ止めるフックとして活用できる。しかもVxRailの場合、EMCのデータ保護ソリューションなど、より高度な機能をもつ製品との連携も可能なので、追加提案によるアップセル効果も期待できる。
必要なITリソースを必要なときにすばやく調達できるハイパーコンバージドインフラは、今年大きな成長が期待できる分野。当面は前出のパートナー2社を通じた販売で市場の立ち上げに注力するが、将来的にはEMCパートナー全体に販売チャネルを拡大する方針だ。