独立して振り返ってみると、もっと早く自分の価値を棚卸し、価値を高める活動をしておくべきだったと感じる。企業に守られ定年まで過ごすことができる時代はすでに過去のものである。運よく定年を向かえられたとしても、医療の進歩により老後は長く、生きるリスクは経済面のみならず、生きるモチベーションを見出すことのほうが私には大きかったからだ。
40歳半ばにして自分が提供できる価値は何かを考えたが、大企業に属していた時と同じパフォーマンスを個人で出すことは資本力からしても不可能だ。半分の価値しか提供できないのならば、単純にいうと収入は半分になる。ならば二つの仕事をすればいい。そう考えたら一気に経済面も仕事に向き合うモチベーションも解決してしまった。つまり、価値を提供できる仕事を増やせば収入が増える。そのスパイラルを回せばいい、単純だ。企業に守ってもらうという楽園はもうない。企業は何もしてくれない。してくれないのではなく、できないのだ。企業は社員全員を守ることができないのならセカンドキャリアの準備に向けて、2枚目の名刺をもつことを推奨するべきだ。
個人は2分の1定年の40歳で、提供できる価値は何か?ワクワクする仕事がそこにあるのか?家族の生活は充実しているのか?早い段階で人生のマップをリセットする機会をもつべきだ。独立や、地方への転職も選択肢の一つである。地方転職を仕事面ではマイナスのイメージで捉える人も多く、移住に際しては農業やNPOばかりが報道されるが、地方には優良企業がたくさんある。大企業のように規模は大きくないが、自分の意見がダイナミックに反映される仕事はおもしろい。管理者よりプレーヤーでいたい人や、現場でマネージメントを学びたい人には、地方の仕事はおもしろいし活躍できる可能性が高い。
企業は個人の選択肢が広がるように副業なり、社会活動を行う二つ目のスキルの開拓を推奨するべきである。それが企業からの“自立”につながるのだ。東京五輪に向けて地方企業も海外進出やインバウンド事業への展開が多くなってきている。これまでのスキルを生かす場は、同業他社だけではなく地方の異業種という選択肢もある。一度自分の仕事を振り返り、これからの自分のワークプランを見直してみてはいかがだろうか。
事業構想大学院大学 特任教授 渡邊信彦
略歴
渡邊 信彦(わたなべ のぶひこ)

1968年生まれ。電通国際情報サービスにてネットバンキング、オンライントレーディングシステムの構築に多数携わる。2006年、同社執行役員就任。経営企画室長を経て11年、オープンイノベーション研究所設立、所長就任。現在は、Psychic VR Lab 取締役COO、事業構想大学院大学特任教授、地方創生音楽プロジェクトone+nation Founderなどを務める。