改正された労働者派遣法が2015年9月30日に施行され、特定労働者派遣事業(届出制)と一般派遣労働者派遣事業(許可制)の区分が廃止、すべての労働者派遣事業が許可制となった。完全施行までには3年の経過措置があるものの、それまでに派遣法の要件を満たさないと、派遣事業を展開できなくなってしまう。影響を受けるのは、特定労働者派遣事業を営む中小規模のSIerだ。派遣業を続けるのか、辞めるのか。多くの経営者が悩むなか、派遣事業を伸ばすと宣言するのがビーブレイクシステムズだ。(取材・文/畔上文昭)
Company Data会社名 ビーブレイクシステムズ
所在地 東京都品川区
資本金 6000万円
設立 2002年2月
社員数 124人
事業概要 パッケージソフトウェアの開発と販売、SaaS版の提供。客先常駐開発。受託開発
URL:http://www.bbreak.co.jp/ 派遣法の改正を追い風に

高橋 明
取締役 自社開発のERPパッケージ製品などを開発・販売しているビーブレイクシステムズ。創業時から自社パッケージに取り組んできているが、立ち上げ当初は売り上げが厳しいこともあり、収益の安定化を求めて、派遣事業に取り組んだ。派遣事業は現在も続いていて、パッケージ事業と派遣事業の両輪でビジネスを展開している。改正された労働者派遣法にはいち早く取り組み、労働者派遣事業の許可も得た。
「派遣法の改正により、顧客から免許を取得してほしいと言われるようになった。派遣事業の許可を得るのは難しくないが、預金額や資産額などの要件があるため、企業に体力がなければ対応できない。当社としては、改正された派遣法の要件を問題なく満たすことができた。派遣事業は今後も続けていくし、むしろ続けるのが当社の役割」と、ビーブレイクシステムズの高橋明・取締役は派遣事業への注力を明言している。
改正前の派遣法では、IT業界のエンジニア派遣は特定労働者派遣事業の対象であり、届出をするだけで派遣事業を営むことができた。創業したばかりのSIerが最初の一歩として派遣事業に取り組むことが多いのは、その手軽さからだ。ところが、派遣法の改正後は、中小SIerの新規参入が難しくなる。逆に労働者派遣事業の許可を得た企業は、競合が減るため、より派遣事業が展開しやすくなる。
リーマン・ショックの影響
派遣事業のうまみは、人材を派遣した分だけ毎月の売り上げとなるところにある。システム開発の成功の有無はあまり関係ない。発注元の指示通りに動けばいいため、経営の視点では、安定した収益が見込める事業をすぐに立ち上げられることになる。そのため、創業時のSIerに多い事業となっている。とくにIT業界では人材不足が続いているため、改正前の派遣法の下では、経営リスクが少なくて始めやすい事業となっていた。
ところが、派遣事業を展開するSIerの多くは、リーマン・ショックの影響を大きく受けることとなる。開発案件がしぼみ、発注元が派遣エンジニアから契約を解除していったからだ。それを目の当たりにした多くの中小SIerは、元請けや受託開発へのシフトを急いでいる。
ビーブレイクシステムズでもリーマン・ショックの影響は多少なりともあったものの、大きな影響はなかったという。「年度末まで派遣契約を結んでいたため、それまでの期間に社内でエンジニアを吸収可能にして、リーマン・ショックの影響を吸収した」と高橋取締役は当時を振り返る。今後の経済不況に対しても、同様に乗り切っていけると考えている。
また、派遣はエンジニアが育たないという意見がある。発注元の指示に従うだけで、最新動向などを自分で取り入れることができないためだ。しかし、高橋取締役の見解は違う。「派遣では、一人のエンジニアがさまざまな現場を経験できる。新しい技術を身につけたければ、その現場に行けばいい。むしろ、当社で取り組んでいるパッケージ開発のほうが、最初に採用した開発環境を使い続けるため、新たな技術ノウハウを身につける機会が少ない」。派遣は、エンジニアにとって最新技術習得のチャンスになるという。
サービスで黒字化
「派遣事業は今後も伸ばしていく」とする高橋取締役だが、システム開発案件の減少による影響はいずれくると見込んでいる。「ユーザー企業のIT予算が減少傾向にある。そのため、SaaSを採用するケースが多くなり、多くの予算を必要とするシステム開発案件が減り始めた。開発案件が減れば派遣も減ってしまう。人月商売は今後、厳しくなっていく。そうしたなかで利益を上げる企業体質へと変わっていくには、サービスへの注力が不可欠となる」。ビーブレイクシステムズは自社パッケージのSaaS化に取り組むことで、IT予算の減少に対応しようとしている。今後はそこを伸ばしつつ、派遣事業にも注力していく考えだ。