フルマラソンのシーズン真っ只中である。なかでも2月はハイシーズンで、多くのランナーがトレーニングの成果を発揮する勝負レースを設定する。私も2月7日開催の別府大分毎日マラソンを勝負レースとしていたが、自信がないのでスタート前から言い訳を考えている。
フルマラソンはペースが大事。ペース次第でゴールタイムが大きく変わってくる。今シーズンは11月と12月で3回ほどフルマラソンを走ったが、1回目と2回目は失敗レース。前半を飛ばし過ぎた。とくに2回目のレースは最後の10キロの失速がひどく、スタート後の10キロよりも15分ほど遅いタイムだった。ペースがよかったのは3回目のレース。最後までほぼフラットなペースを維持できた。スタート直後の10キロは2回目のレースよりも5分以上遅かったが、ゴールタイムは5分以上早かった。タイムだけではない。肉体的にも精神的にも、3回目が一番楽だった。
ただ、自分のペースをつかむのは非常に難しい。その日の体調や気候が影響することから、何度走っても自分に最適なペースがつかめないでいる。マラソンの醍醐味は、ペースという自分探しなのかもしれない。
システム開発のフルマラソンといえば、大規模案件のウォーターフォール型開発が思い浮かぶ。最初に飛ばし過ぎれば仕様漏れなどが出やすくなるし、遅すぎると納期に間に合わない。顧客や開発メンバーによってもペースが乱れるだけに、プロマネには絶妙なさじ加減が求められる。ウォーターフォール型開発において、現場を何回も経験した熟練プロマネが就くのは、そのためだ。
ということは、ペースを気にしない短距離レースはアジャイル型開発ということになる。力の限り突っ走る。持久力よりも瞬発力だ。プロマネを担当するのは、ベテランよりも瞬発力のある若手がいいのではないか。
フルマラソンに挑戦する人は、短い距離を走るトレーニングから始めて、徐々に距離を伸ばしていく。システム開発も、アジャイルに最適な小規模案件でプロマネとしての経験を積み、徐々に案件規模を大きくしていくのが理想的だ。プロマネ志向のエンジニアであれば、案件が大きいほど燃えるはず。若手はウォーターフォール型開発を古臭いと感じるかもしれないが、いずれは開発の“ペース”を知ることの醍醐味がわかると期待したい。
『週刊BCN』編集長 畔上文昭
略歴
畔上 文昭(あぜがみ ふみあき)

1967年9月生まれ。金融系システムエンジニアを約7年務めて、出版業界に。月刊ITセレクト(中央公論新社発行)、月刊e・Gov(IDGジャパン発行)、月刊CIO Magazine(IDGジャパン発行)の編集長を歴任。2015年2月より現職。著書に「電子自治体の○と×」(技報堂出版)。趣味はマラソン。自己ベストは、3時間12分31秒(2014年12月)。