［ウォーターフォール型開発］
開発をいくつかの工程に分け、各工程を逆戻りすることなく順番に進めていくシステムの開発モデル

　システム開発手法のなかでも、古くから使われてきた代表的なモデル。ウォーターフォール（滝）という言葉が示す通り、水が上から下に流れ落ちるように、前の工程に手戻りすることなく、あらかじめ定めた順番通りに開発を行う。

　大まかには、ウォーターフォール型開発によるシステムの開発工程は、要件定義、システム設計、プログラミンング、テストに分かれる。あらかじめ仕様をすべて定めてから開発に着手し、この順番で開発を進めていく。前工程を完了させてから次の工程に着手することから、開発計画に対する進捗状況が管理しやすい。そのため、大規模システムの開発に向いているとされる。ただし、開発が長期間（数か月～数年）にわたることから、綿密なチェックと計画性が求められる。

　そうした特性上、開発途中での仕様変更や前工程へ戻ることは基本的に想定されていない。ところが、ユーザーがシステムを確認できるのはテスト段階に入ってからであり、そこでユーザーの要望との食い違いが発覚すると仕様を変更することになる。手戻りが発生すると、スケジュールの遅延や予算の超過を招き、プロジェクトに大きな影響を及ぼしてしまう。

　ウォーターフォール型開発では、開発したシステムの不具合やユーザーからの要望と合致しないなどの問題が発生しがちである。これを回避するために採用されるシステム開発手法の一つが「アジャイル型開発」である。（文／前田幸慧）

［アジャイル型開発］
あらかじめ仕様の変更があるとの前提で、工程ごとに反復しながら進めていくシステムの開発モデル

　アジャイル（ajile）は「すばやい」「機敏な」という意味。アジャイル型開発ではプロジェクトのなかで、反復（イテレーション）と呼ばれる要件定義からテストまでのサイクルを短期間（1週間～4週間程度）で繰り返す。これにより、仕様変更などのリスクに対して柔軟に対応しながら全体のシステムをつくり上げていく。ウォーターフォール型開発と対比されることが多い開発手法である。

　アジャイル型開発は、あらかじめ仕様の変更があるという前提に立ち、ユーザーにとってより重要となる機能を優先的に、ユーザーが業務に使用するとわかっている機能を実装する。最小限の機能を優先して開発することから、開発コストと開発期間を抑えることができる。また、イテレーションごとに計画の見直しやフィードバックを行うことで、ユーザーの要望に適宜対応できる。最終的にユーザーが満足できる製品の開発を目指す。

　そうした反面、アジャイル型開発は、はじめから仕様の変更が想定されていることから、ゴールがみえにくく、見積もりが難しいという問題がある。また、ユーザーが構築するシステムに対して、最終的な完成イメージをもっているとは限らないため、果てしなくイテレーションが繰り返されてしまう可能性もある。

　アジャイル型開発は小規模なシステム開発案件に向いているとされていたが、大規模開発でも適用されるケースが出てきている。（文／前田幸慧）