［コンピュータウイルス］
生物に感染するウイルスに似た働きをするプログラム

　生物に感染するウイルスは、その生物の細胞を利用して増殖する。生物の細胞がなければ、増殖することができないのに、生物を死に追いやることもある。謎の存在である。

　コンピュータウイルス（ウイルス）も、潜伏するためにプログラムファイルを必要とする。プログラムファイル内に入り込み（ファイルを改ざんし）、増殖の機会を待つ。

　コンピュータウイルスが増殖するのは、潜伏したプログラムファイルが起動されるときである。例えば、あるソフトウェアの保存ファイルが、コンピュータウイルスに感染したとしよう。その保存ファイルをソフトウェアで開くときに、自己増殖するかたちで、他のファイルに感染していくというわけである。自己増殖するだけならいいが、コンピュータ内にあるファイルを削除したり、破壊したりする。その結果、コンピュータが正常に起動しなくなることもある。

　コンピュータウイルスの被害を防ぐには、感染の早期発見が求められる。それには、ウイルス対策ソフトなどの導入が不可欠だ。ウェブページや電子メールなど、コンピュータウイルスには多様な感染経路があることや、コンピュータウイルス自体も高度化しているため、手作業で対策することは不可能である。

　ちなみに、コンピュータウイルスを駆除することは可能だが、壊れたファイルを修復するのは難しい。ウイルス対策ソフトに加え、日頃のバックアップも忘れてはならない。（文／前田幸慧）

［ワーム］
人間の体内に宿るギョウチュウのような働きをするプログラム

　人間の体内に宿るサナダムシ（tapeworm）が語源とされるワーム。サナダムシが現代人の体内に宿っているかどうかはともかく、ワームはサナダムシのようにコンピュータに寄生して、自己増殖をしていく。また、自己増殖だけでなく、コンピュータの仕組みを悪用したり、セキュリティホールを突いたりして、被害をもたらす動きもする。

　コンピュータウイルスとワームは一緒に扱われることが多いが、人体に感染するウイルスと寄生するサナダムシと同様の違いがある。コンピュータウイルスはプログラムファイル（ウイルスでいうところの細胞）を必要とするが、ワームはプログラムファイルと関係なく単独のプログラムとしてコンピュータに感染（人体に寄生）する。また、ワームは単独のプログラムであることから、プログラムファイルに依存するコンピュータウイルスと比べると感染力が強いとされる。ネットワークを介して他のコンピュータへと超高速で感染が拡大することがある。

　新種のインフルエンザウイルスなどはパンデミックを起こすことがあるが、サナダムシがパンデミックを起こすことはない。その点では、ウイルスとサナダムシの関係は、コンピュータウイルスとワームの関係と逆になる。

　多くのワームはウイルス対策ソフトなどで検出できるが、ひとたび動き出すとコンピュータを再起不能にする可能性がある。最悪の事態を避けるためにも、日頃からセキュリティ関連の情報を確認するようにしよう。（文／前田幸慧）