提供開始から5年半で約200社に上る販売・ソリューションパートナー網を構築した「ニフティクラウド」。ニフティのB2B市場への本格進出が成功した背景には、「オンプレミス/物販」から「クラウド/サービス」へのビジネス転換をサポートするていねいな支援体制があった。(日高彰)

清水智記
部長 ユーザーが利用するアプリケーションが変わらなくても、オンプレミスからクラウドへ移行する場合、考慮しなければならないポイントは多い。例えば、オンプレミスでは最大負荷に応じたハードウェア選定が必要となるが、クラウドであれば低負荷時は縮退させておいて、必要なときだけリソースを拡大することができる。このような特性の違いを十分に理解しておかなければ、せっかくクラウド化を図ってもそのメリットを発揮できないということになる。
ニフティの清水智記・営業企画本部クラウドサービス営業部部長は「クラウドの利点をエンドユーザーに向けてどのようにアピールしていくか、当社もパートナー各社にも当初は苦労があった」と話す。パートナー自身がクラウドにメリットを感じない限り、過去の経験上売りやすいオンプレミスの提案からクラウドへ軸足を移してはくれない。そこでニフティでは、技術情報の提供といったテクニカルサポートに加え、パートナーの営業担当者が“クラウドの売り方”に習熟するための販売支援に力を入れている。
具体的な支援内容は、商談への同行、展示会等への共同出展といった一般的なものになるが、場合によってはニフティの担当者がパートナーの事業所に常駐することもあるといい、販売チャネルへのコミットの度合いは強力だ。また、従来の製品販売型ビジネスとは異なり、クラウドは長期にわたって継続的に提供されるサービスであるため、運用開始後も顧客からは継続的に問い合わせが発生する。ニフティでは、パートナー向けのサポート体制を充実させるのに加え、最新のクラウド活用事例やノウハウを積極的にパートナーに提供し、成功事例の横展開、既存顧客からの売り上げアップを支援する。
ニフティクラウドが今後パートナー各社との間で取り組みに力を入れていく分野としては、IoTが挙げられている。福西佐允・営業企画本部ビジネス企画部部長は「ニフティクラウドでIoTを展開してください。ではなく、パートナーと一緒にIoTの世界をつくり上げていきたい」と話し、ニフティとしても、この市場には主体的に取り組んでいく姿勢をみせる。今年7月には、IoT開発支援サービス「IoTデザインセンター」も提供を開始した。
IoTでは、どんなアプリケーションが“当たる”のか、まだ各社手探りの段階だ。だからこそ、スモールスタートが可能で、ヒットすれば大きく、需要がなければ撤退といった拡縮が容易なクラウドと相性がいい。「ニフティクラウド上に優れたIoTソリューションが生まれれば、今度は逆に我々がそれを販売したい」(福西部長)としている。IoTを軸にした協業によって、クラウドビジネスの拡大をさらに加速させる考えだ。