富士通の製品・サービスのポートフォリオは、いまやグローバルでも有数の充実度を誇る。グローバル大手の総合ITベンダーは、高収益事業にリソースを集中させる傾向にあり、一見、市場のトレンドとは正反対の動きにみえるが、山本正已会長は社長時代、本紙に対して「ポートフォリオを狭めていった会社ほど苦しんでいる」と話した。国産トップの総合ITベンダーは、事業環境の変化が加速する一方のIT市場で、どう世界と戦うのか。成長への青写真を探る。(本多和幸)
富士通は、事業セグメントを「テクノロジーソリューション」「ユビキタスソリューション」「デバイスソリューション」「その他」に大別しているが、売上構成をみると、「テクノロジーソリューション」の占める割合が群を抜いている。2014年度(15年3月期)の連結決算では、総売上高4兆7532億円に対して、同セグメントの売上高は3兆3028億円となった。さらに細かくみると、テクノロジーソリューション・セグメントのなかでも、SI(システムインテグレーション)・サービスは2兆7062億円の売上高となり、これだけでも全社売上高の約57%を占める。まさに、主力中の主力事業といえる。大規模なシステムの企画、構築から運用、保守まで総合的にサポートし、いわば顧客のITを「丸抱え」するかたちで堅調に伸ばしてきたといえる。
一方で、クラウド、ビッグデータ、ソーシャル、モバイル、そしてIoTやオムニチャネルなどの新しいトレンドに関しては、総合ITベンダーとして市場をリードする存在とはまだいえないのも実際のところだ。しかし、ここに来て富士通は、新インテグレーションのコンセプト「FUJITSU Knowledge Integration」を発表し、見方によっては“出来上がってしまった事業”の殻を破り、SI・サービスの新しい成長のかたちを実践しようとしている。
FUJITSU Knowledge Integrationで実現しようとしているのは、従来の業務システムなどを指す「Systems of Record(SoR)」と、モバイル、ソーシャル、IoTなど、人や物をつなぐ比較的新しい領域のシステム「Systems of Engagement(SoE)」を融合させ、顧客の起業競争力強化や、新しいビジネスの創出に貢献できるソリューションを目指すことだ。IBMは、これを「Systems of Insight」と定義しているが、富士通の新しい方向性も、コンセプトの面では類似している。次回以降、FUJITSU Knowledge Integrationの詳細と、これを実現するための施策を解説する。