今、パソコン市場がにぎやかだ。新製品のパソコンのマイクロソフトのOSは、近く販売されるWindows10のPRのほか、8、7も並んでいる。値段も中古品のほうが高い場合があって、XPなどは1台10万円を超えるものもある。
しかし、部品などは揃わないし、なにかと不便ではないかと思われるが、心配ご無用。全国に「XPパソコンお助け隊」なるものがあり、シニア人材が訪問して直してくれる。公式のサポートサービスがなくなること自体がビジネスチャンスなのである。マイクロソフトがサポートしてくれなければ、ウイルス対策に困るのではないかと思われる。ところが、パソコン難民は身の程をよく知っている。おかしな外国などからのメールには応答しないし、あまり変な検索もしない。
ウイルス対策で難しいのは、潜り込む相手のノウハウのほうがどうしても上である点である。どんなにすばらしいセキュリティの対策を施しても、例えば米国政府など、どんな強固なシステムであってもウイルスには侵入される。このリスクは否めない。ただ、個人レベルのパソコンであまりに神経質になる必要はないかもしれない。むしろ、マイナンバー制度などのように、年金も医療も税金も預金も一緒にしようとするほうが心配だ。システムは必ず狙われる。そして狙う側のほうが技術が上である。振込め詐欺が後をたたないのに、大丈夫だろうか。
パソコンの話に戻ると、メールとインターネット、ワードとエクセルのみの利用者がほぼ50%程度を占める。このユーザーにすべてXPから8に移そうとすること自体が無理な話なのである。韓国、中国、ベトナムに行くと、従来型の携帯電話はほとんど見られない。皆がスマートフォンである。すべてのおじさん、おばさんにスマートフォンが使えるのかと聞いたら、見栄で持っていて、携帯電話の機能でしか使ってない人も多いという。
XPのサービス停止以来、オフィスを訪問する時には、どんなパソコンを使っているかを観察する。8で揃えたオフィスは一つも目にしていない。多くが7であり、XPを見かけることもある。サービスが高度化するほど、ニーズは多様化する。こんなはずではなかったと考えているのは、マイクロソフトだけであろうか。
アジアビジネス探索者 増田辰弘
略歴
増田 辰弘(ますだ たつひろ)

1947年9月生まれ。島根県出身。72年、法政大学法学部卒業。73年、神奈川県入庁、産業政策課、工業貿易課主幹など産業振興用務を行う。01年より産能大学経営学部教授、05年、法政大学大学院客員教授を経て、現在、法政大学経営革新フォーラム事務局長、15年NPO法人アジア起業家村推進機構アジア経営戦略研究所長。「日本人にマネできないアジア企業の成功モデル」(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。