米IBMが2月にラスベガスで開いたビジネスパートナー向け年次イベント「IBM Partner World Leadership Conference(PWLC) 2015」では、バージニア・ロメッティ・会長・社長兼CEOが、基調講演のなかで先進パートナーとして日本の企業を名指しで紹介する場面があり、会場を驚かせた。この日本のパートナーとは、PWLC 2015で、優秀パートナーを表彰する「IBM Beacon Awards 2015」のOutstanding enterprise Cloud solution部門を受賞した、AITだ。同社の大熊克美社長に、パートナーとして、IBMの変革にどう向き合っているのかうかがった。(本多和幸)
大熊克美 AIT代表取締役社長
──IBM Beacon Awards 2015の受賞は、何が評価されたと考えているか? 大熊 直接的には、日本の世界的な大手メーカーからSugarCRMを受注した案件が受賞のきっかけになった。開発環境にはIaaSの「SoftLayer」を採用し、本番環境はIBMのオンプレミス・サーバーで構築した、クラウドとオンプレミスのハイブリッドの提案だった。ロメッティ氏にも、これをIBMのクラウド戦略に沿った先進提案として紹介してもらったわけだが、私としては、これまでの当社の取り組みそのものが評価された結果だと自負している。
──これまでの取り組みとは? 大熊 2010年に米IBMの本社を訪問し、2015年までのロードマップをみせてもらった。そこで、クラウドとアナリティクスに絞って投資して、新しい成長戦略を描くことを決意した。ITインフラは、クラウド化する部分がどんどん拡大していくのは間違いないし、コストカットではない、戦略的なIT活用を提案していくためには、アナリティクスのソリューションを手がけることも非常に重要だと考えた。
まずは自社で実際に使ってみて、ノウハウを蓄積することに努めた。その後、東日本大震災を経て、岡三証券から災害時にだけ使う安価で効果的な情報共有/意思決定システムがほしいというオーダーを受けて、IBMのクラウドサービス上で開発し、高い評価をいただいた。これは「いつでもリンクLynfty」という商品名で自社パッケージとして販売もしている。クラウドビジネスでは国内のIBMパートナーで先進的な取り組みをしてきた。
アナリティクスに関しては、「IBM SPSS」といったBIツールを中心商材として揃えている。IBM Beacon Awards 2015受賞のきっかけとなったSugarCRMと組み合わせて機能拡張などもできるし、そうしたインテグレーションの提案を独自にできるノウハウが、これからの日本のSIerにはより重要になる。
──AIXサーバー上のインフラ構築サービスは従来からの主要事業としているようだが……。 大熊 クラウドがオンプレミスのビジネスを浸食するのではないかという懸念があったし、覚悟もしていたが、少なくとも現状では、両方に対応できることが商談の機会創出につながっていて、マイナスの影響はない。ただし、AIX上の構築には大変自信をもっているので、SoftLayerへの早期の実装を期待したい。