畔上編集長が今、いちばん気になるクラウド
<畔上編集長が今、いちばん気になるクラウド>第1回 サイボウズのクラウドはどこまで進化するのか 1万社達成の今とこれからを社長に聞く
2015/04/16 20:28
週刊BCN 2015年04月13日vol.1575掲載
Key Personに聞く サイボウズ 青野慶久社長
●クラウドカンパニーへの変革に パートナー各社は猛反対社長 青野慶久氏
クラウドのビジネスモデルは、月々の利用料金がベースのストックビジネスであることから、導入時の売り上げが小さい。しかも、クラウドサービスを提供するのはサイボウズであるため、多くのパートナーが顧客と売り上げをもっていかれると危惧した。
「クラウドを始めてから1年間は、なかなか信用してもらえなかった。とはいえ、ユーザーはクラウド型のサービスを望んでいた。そこにしっかり訴求していくことで、ユーザーニーズがあることを証明し、パートナーのみなさんを説得していった」(青野社長)。
サイボウズがパートナー重視の姿勢をみせたこと、スタート時から高い品質で安定稼働を維持したこと、そしてセキュリティ対策にも注力したことで、「強固に反対していたパートナーも、今では積極的にクラウドサービスを販売している」という。パートナーとの二人三脚の歩みは、今後も着実に進めていく。「今年はパートナーのサポートを強化する。人的にも、技術的にもしっかり支援していく」と青野社長は力を込める。
●開発本部長を兼任 クラウドの開発に注力
このほど青野社長は、社長兼任でグローバル開発本部長に就任した。「クラウドの売り上げが安定するまではと、この数年は販売に特化してきたが、これからは開発を優先していきたい」との思いからだ。サイボウズのクラウドには多くの実績があり、安定性や使いやすさで高い評価を得ていることから、なぜこの時期なのかという疑問を抱かずにはいられない。「cybozu.comの完成度は高いが、これからどんな開発をしていくのか」と問いかけてみると、青野社長はこう答えた。「まだまだやりたいことの1%もできていない。開発本部長として、まだ達成していない99%の実現に向けて動き出す」。青野社長の考えは一歩も二歩も先にある。
もちろん、これまでの開発にも自信をもっている。同社の技術力について「欧米の最先端のサービスと比較しても決して負けない世界トップレベルにある」と青野社長は語る。グローバル市場に打って出る方針を明確にしているのは、技術力に自信があるからだ。進化への意欲と他の追随を許さない開発力が同社の生命線であり、そこをさらに伸ばしたいという意気込みを、グローバル開発本部長への就任で明確にしたというわけだ。
●kintoneがシステム開発の概念を変える
cybozu.comのなかでPaaS(Platform as a Service)として分類されるクラウドサービスが、「kintone」だ。注目すべきは、kintoneにはシステム開発の概念を変える力があるということ。「kintoneを使った開発を“リアルタイム・アジャイル”と呼んでいる」というと、青野社長は乗ってきた。「それはいいですね。確かに、打ち合わせの場で開発して、その場で納品できるのもkintoneの特徴だから」。システム構築のスピードと安定稼働を重視するパートナーが、積極的にkintoneを採用しているのはそのためだ。
グローバル開発本部長に就任した青野社長は、cybozu.comのなかでも主にkintoneに注力していくという。さまざまなシステムを簡単に構築できるkintoneだが、青野社長には決してぶれることのない方針がある。「kintoneは、当社が考える“グループウェア”という分野の延長線上にある。コンセプトは、組織で働く人がコラボレーションして効果を最大化するための環境を提供するというもの」。企業内ないしは企業間でのコラボレーションを活性化させるための工夫は無限にある。多くのパートナーがサイボウズのクラウドを安心して支持できるのは、技術力やサービスのよさだけでなく、この方針があるからかもしれない。クラウドベンダーへの変革を成し遂げたサイボウズの今後に、期待を掻き立てられる。
編集長の眼
経営者の強い意志が開く無限の可能性
kintoneは当初、クラウドサービスとしての開発はしていなかった。それを青野社長が、これからはクラウドだということで方針変更を指示したという。それだけに、kintoneへの思い入れも強いはずだ。グローバル開発本部長として、主にkintoneの開発に携わるというのも納得できる。サイボウズのクラウドは、どこまで進化するのか。気にならずにはいられない。 無限の可能性を感じさせるkintoneだが、その力を引き出すのはパートナーだ。サイボウズのクラウドに対して、パートナーは当初否定的だったというが、どのような点を懸念したのか、それは本当に解決されたのか。そこも気になる。
次回は、サイボウズの取り組みから、クラウドに最適なパートナープログラムを探る。
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