
自動走行システムは、社会を大きく変える可能性を秘めるビッグデータやIoTでITSも飛躍的に進化
ITを活用した安全で快適な道路交通の実現も、政府が東京五輪で世界に示したい成果の一つだ。
自動車産業は、日本が世界に誇る産業として発展してきたが、その自動車の活用に不可欠な道路交通インフラについても、高度化を目指すのは当然の方向性だ。道路交通の安全性を高め、輸送効率や快適性の向上などを図るために、先進IT技術を活用して構築する道路交通システムを総称して「ITS(Intelligent Transport Systems=高度道路交通システム)」と呼ぶ。これまでの取り組みでも、日本のITSは世界最先端に位置していたといってもいいレベルにある。しかし、ビッグデータやIoTといったITトレンドの到来につれ、ITSは従来とまったく別次元のソリューションに進化する可能性が高まった。
そうした状況下で日本の相対的な先進性を維持するために、政府のIT戦略「世界最先端IT国家創造宣言」では、ITSの高度化と普及を重要施策に掲げた。2020年の東京五輪に向けて、大都市圏の慢性的な交通渋滞の解消や交通事故の大幅な削減を果たし、来日する観光客にインフラサービスの面でも十分な「おもてなし」をする。さらには、世界最先端のITSの見本市としても活用し、自動車と道路交通インフラの輸出促進にもつなげる考えだ。
自動走行システムは市場化が期待できる時期も明示
ITSのなかでも、具体的な注力テーマとして掲げられているのが、「安全運転支援システム、自動走行システムの開発・普及」と、「交通データ(ビッグデータ)利活用のための基盤・体制整備」だ。政府のIT総合戦略本部(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部)は、昨年6月、その具体的な目標とロードマップを取りまとめ、「官民ITS構想・ロードマップ」として公表した。創造宣言の改定では、このロードマップの内容が反映された。
内閣官房IT総合戦略室の濱谷健太・参事官補佐は、「技術開発やビジネス展開は、当然、民間企業が担うことになる。官民ITS構想・ロードマップでは、民間側の技術開発のスケジュールとすり合わせて内容を詰めたこともあって、実現性のある計画になったと自負している。とくに、イノベーションが進んでいる自動走行システムについては、具体的に市場化が期待できる時期をはっきり示した」と、その内容に自信をみせる。次回は、ロードマップの内容と2015年度事業で何に取り組むのかを具体的にみていく。(本多和幸)