電子書籍の検索サイトを運営するhon.jpの調べによると、2014年の電子書籍の総配信点数（推計）は72万点（前年比18.3％増）になった。72万点のうち、スマートフォンなど新たなプラットフォームに配信する作品は68万点（同51.1％増）。出版社の作品づくりが、スマートフォン向けに移行する傾向が顕著に現れている。

　業界では、人文科学・古典学術・社会科学・自然科学など、専門書の増加が目立っている。また、出版社の垣根を越えて旅や医書など同じジャンルで括った総合電子ストア「たびのたね」や「医書.jp」なども話題となった。

　紙版の販売金額は1996年をピークに右肩下がりを続けているが、電子書籍と合わせた額は増加傾向である。2013年、紙とコミックスの売り上げは9878億円、電子書籍を加えると1兆800億円で、2012年の実績を0.8％上回っていた。そして2014年も電子書籍の販売額が1000億円を超えるとみられていることから、前年実績を大きくクリアしそうだ。活字離れといわれて久しいが、コンテンツに触れる機会は確実に増えている。

　2014年はいろんな意味で出版業界が正念場を迎えた。それは海賊版に対する著作権の問題だった。14年4月に著作権法が改正されて、紙の本にしか及ばなかった出版権が電子書籍にも設定され、今年1月の施行から出版社がそれに対応できるようになったのだ。

　この改正については、国会の付帯決議により出版権の登録・管理制度を整備するよう求められており、出版界は14年12月に「出版情報登録センター」を設立した。それは紙と電子の書誌情報のほか、出版権の情報を一元化したうえで、その所在を明らかにするものだ。

　今後、出版される近刊情報や拡材、映画化、フェア展開などの販促情報も合わせて出版社自身が登録することになる。この出版権の所在は第三者にも公開される予定で、誰でも見られる環境をつくり、7月に本稼働する見通しである。この基盤になる出版社と著者の契約書については、昨年、日本書籍出版協会がひな型を作成し、電子市場の活性化に向けて、一歩ずつ歩を進めているという状況。きっと他の業界からみたら、「グズグズしている」と思われるかもしれないが、著者や外資系IT会社などとの話し合いを経て、今に至っている。