開発者とのつながりを生かす

　受託型のソフト開発事業に飽きを覚えたフリーエンジニアの中津川篤司（36歳）は、新たなチャレンジとして、今年、「エバンジェリストの代行業」という新ビジネスを始めた。

　エバンジェリストとは、製品やサービスをユーザーやパートナー企業にわかりやすく説明する専門家。いわば、プレゼンのプロだ。技術を熟知し、伝える力もあわせもつスペシャリストは意外に少ない。中津川はここに着眼した。

　10年ほど前から続けているオープンソースソフト（OSS）関連情報を提供する開発者向けブログ「MOONGIFT」で得た読者と、開発者に向けて有用な情報を発信するノウハウを活用し、企業のマーケッターに代わって自社製品・サービスの利点をMOONGIFTの読者に伝える。顧客となった企業がアピールしたい製品・サービスをブログで紹介したり、MOONGIFTの読者を集めたイベントを開いて講演したりして、顧客企業から対価を得るわけだ。「ポイントは、開発者のコミュニティ（読者）をもっていること。テクノロジーとプレゼン力があるだけでは勝負にならない。MOONGIFTの読者にアプローチしたい企業が数社はあると見込んだ」と、中津川は言う。

　最初の顧客ターゲットは、大手通信キャリアのクラウド事業部門。代表のメールアドレスに投げ込んだ企画書が、クラウド事業部門の開発コミュニティづくりに力を入れている担当者の目にとまった。「その担当者の方はMOONGIFTをご存じで、それで会ってもらえた」という。ここでも地道に続けてきたブログが生きたわけだ。話はとんとん拍子で進み、中津川は今、この大手通信キャリアの名刺をもって活動している。肩書きはもちろん、「エバンジェリスト」だ。（つづく）［文中敬称略］