ブログを営業マンとして活用し開発案件を受注

　中津川篤司（36歳）は「株式会社MOONGIFT」の代表取締役を務めているが、社員はいない。一人で活動している。いくつかの企業で開発者として働き、28歳のときに独立した。きっかけは、独立直前に勤めていた会社で副業として始めたブログだった。

　「他の人に負けない分野をもちたいと思って、その当時の所属会社に許可を得て、まだ情報が少なかったオープンソースソフト（OSS）関連の技術情報ブログ『MOONGIFT』を始めた。そうしたら、読者からOSSを使ったシステム開発の依頼を受けるようになり、本業よりも忙しくなったので、じゃあ、独立しよう、と」。

　ブログで開発者向けに詳細な技術情報を提供するのと同時に、システム開発案件を募集。ソフトを開発して生計を立てる。中津川は、ブログを営業マンのように活用して案件を発掘していった。「ブログもOSSも、ブームになる少し前に始めたのがよかった」。

　受託開発で収入に困ることはなかったが、下請け開発に飽きて、「新しいことに挑戦したい」と思った中津川は、今年から新たなビジネスを手がけている。それが「フリーエバンジェリスト業」である。

　開発者に向けて情報を提供したいと考えるITベンダーは多いが、「わかりやすく情報を提供する術を知らなかったり、開発者のコミュニティにアプローチする方法がなかったりして、困っているのではないかという仮説を立てた。ブログを続けてきたなかで、培った情報提供のノウハウと、開発者を読者として抱えていることが有利になると思った」。中津川は、早速、ある企業に提案を持ち込む。「ニフティクラウド」を利用する開発者を集めているニフティである。つてはまったくなかったので、同社の代表メールアドレスに提案書を投げ込んだ。（つづく）［文中敬称略］