霞が関のリーダーに核心をただす!

<霞が関のリーダーに核心をただす! IT政策をどう進めるかネックは何か>経済産業省 情報経済課長 佐脇紀代志 氏 ――現在進行中の重点事業

2014/05/08 16:04

週刊BCN 2014年04月28日vol.1528掲載

語る人
佐脇紀代志 氏
経済産業省 情報経済課長

プロフィール 1992年、東京大学法学部を卒業し、同年、当時の通商産業省に入省。2000年4月、政策研究大学院大学博士後期課程に入学し、03年10月に博士(政策研究)。大臣官房政策評価広報課政策企画委員、中小企業庁長官官房制度審議室長、経済財政・科学技術担当大臣秘書官、経済産業大臣秘書官などを歴任し、11年9月から現職。


データ駆動型のイノベーションを目指す

 ビッグデータやオープンデータなど、デジタルデータを活用した業種横断的な新ビジネスを創出する「データ駆動型イノベーション」というトレンドを、規模の大小を問わず、さまざまな企業に浸透させていくことが、施策の大きなテーマだ。「世界最先端IT国家創造宣言」で、ビッグデータやオープンデータの利活用を促進することになっているが、その大きな流れのなかで経済産業省が進めるべきミッションの一つといえる。

 今年度から、新たな施策も始める。まずはエネルギーの分野に焦点を当てた施策だ。東日本大震災の後、HEMS(家庭用エネルギー管理システム)やスマートメーターの導入が進み、最も小口の需要家である一般家庭各戸の情報がかなりリッチになってきている。そうした情報は、各家庭の電力使用状況を時系列を追って、きれいに表現できるデータセットとして扱うことができる。

電力使用データで新事業

 具体的には、1万世帯にHEMSを実装したうえで、これをクラウドで管理するプラットフォームを構築する。予算は40億円を確保した。課題を抽出しながら、プラットフォームは標準化されたものに仕上げたいと考えている。

 プラットフォームに集約されたデータをサードパーティが利用できるようにすることで、各家庭の生活パターンがわかる。例えば独居老人の安否確認や、企業の各種マーケティングにも使うことができるだろうし、新たなビジネスを生み出すポテンシャルは十分にある。

 エネルギーマネジメント全体としてはともかく、HEMSのような細かいシステムは日本が世界で最も進んでいる。データの活用基盤を標準化することは、将来的に日本の方式を国際展開し、ITベンダーなどの商機につなげるうえでも重要だ。

 もちろん、データを活用する際にプライバシーの問題には十分留意する必要がある。内閣官房を中心に、パーソナルデータの利活用ルールの明確化や手続きの標準化が進んでいるが、役所の議論は、とかく規制一辺倒になりがちだ。経産省としては、能力のある事業者が有効にデータを利活用できるように、政府内の議論でイニシアチブを取っていきたい。(談)(本多和幸)

組織の概要


 ITを経済活動の基盤として広く活用するための環境整備を担当。テクノロジーのトレンドに合わせて、IT利活用の障害となる法制度や規制の見直しなども検討する。
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