霞が関のリーダーに核心をただす!

<霞が関のリーダーに核心をただす! IT政策をどう進めるかネックは何か>経済産業省 情報処理振興課長 江口純一 氏 ――施策の目標実現に向けた課題

2014/04/17 16:04

週刊BCN 2014年04月14日vol.1526掲載

語る人
江口純一 氏
経済産業省 情報処理振興課長

プロフィール 1964年8月生まれ。1990年、早稲田大学大学院修了(理工学研究科電気工学専攻)。同年、通商産業省に入省。技術振興室統括班長、内閣府政策統括官、JETROロンドンセンター次長、経済産業省情報セキュリティ政策室長などを歴任。2012年4月、現職について現在に至る。

施策の周知方法に課題

 企業の「攻めのIT投資」を増やすために重要なのは、経営者の意識だ。日本企業のIT投資は、GDP比でみても先進国中でそれほど低いわけではない。しかし、経営者にIT投資をビジネス拡大に役立てようという意識が乏しいことが、電子情報技術産業協会(JEITA)の調査で明らかになっている。

 経済産業省としても、IT投資の質を改善するための施策を打っているわけだが、その情報を、例えば中小企業の経営者に広く周知するというのは簡単ではない。少なくとも、国単独での取り組みだけではうまくいかない。ITベンダーの皆さんにも経産省の施策に関心をもって注目していただいて、IT業界に関わるさまざまな立場の人が協力・連携してユーザー企業のIT投資を促進していく必要がある。

IT投資評価制度の可能性

 IT投資に対する経営層の意識を変えるための施策も考えなければならないと思っている。具体的に事業として進んでいるわけではないが、企業の先進的なIT投資を評価する仕組みを行政側がつくるのも一つの方法だろう。

 例えば、経産省は、2012年度から東京証券取引所と共同で、女性が活躍する場を広く提供している上場企業を「なでしこ銘柄」として選定・発表しているが、このIT投資版を創設するということも考えられる。

 補助金を使ったIT投資促進施策は、金額の規模も期間もスポット的で、効果の広がりに限界がある。外部からの評価により、企業内のIT技術者が、既存のシステムのお守りに縛られるのではなく、新しいチャレンジをして、それが社内でも評価される気運が醸成される可能性がある。

ベンチャー育成の強化も重要

 また、ITは常に新しいプレーヤーの新しい発想があってこそ発展する業界といえる。能力のある人材をいかに育成し、ビジネスの支援をしていくかもIT産業振興のためのポイントになる。 経産省は、ITベンチャー企業のイノベーションや資金調達の支援、さらには突出した能力をもつITクリエーター個人の発掘・育成などを進めてきた。ただ、ベンチャー側からすると、まだまだかゆいところに手が届くものにはなっていなかった。今後は、「エンジェル投資家」とのマッチングなど、これまでの取り組みよりも少し間口を広げて、有望なベンチャーの事業を支援する施策を打ち出すことも検討していきたい。(談)(本多和幸)
  • 1

関連記事

<霞が関のリーダーに核心をただす! IT政策をどう進めるかネックは何か>経済産業省 情報処理振興課長 江口純一 氏 ――現在進行中の注力事業の中身

注目のITベンチャー企業 新たなトレンドへの適応策を探る

経済産業省 ソフト開発の下請けにも消費税転嫁を

経済産業省、平成25年度の「おもてなし経営企業選」の募集を開始