エヌシーアイ（NCI）は、2月19日、初の「ユーザ総会 2014」を東京・港区のホテルで開催した。NCIはまだユーザー会をもっていないが、この総会がユーザー会設立の足がかりになることが期待される。当日は、基調講演にスポーツジャーナリスト。二宮清純氏の講演のほか、ユーザーによる事例発表などが行われた。

V字が最終形ではなかった

　「勝者の思考法」と題して基調講演を行った二宮清純氏は、冒頭、開催中の冬季五輪に言及。二宮氏が最も興味をもったのは、スキー・ジャンプ競技の葛西紀明選手の飛び方だった。

　スキー・ジャンプでは、少しでも飛距離を伸ばそうと、手を回して、つまり空気をかいて飛んでいた時代があった。1972年に開催された札幌五輪の頃には、それが板を並行に揃え「気をつけ」の姿勢に変わる。1998年の長野五輪の前から、現在主流のスキー板を「V字」にする姿勢に進化した。当時はV字姿勢が完成形とされ、コーチや力学系学識者への取材でも「これで最後」と口を揃えていた。

　ところが、である。「実は、葛西選手のジャンプは、V字ではなくH字。V字が最終形ではなかった」。葛西選手も、競技生活を始めた頃は空中でスキー板を揃えていた。それがV字に対応して、さらに空中でスキーのテールを開くH字スタイルに進化した。4年後はさらに別のかたちになっているかもしれない。「技術に最終形はない。イノベーションに終着駅はない」と語った二宮氏は、「もっと技術をみてほしい」と会場に呼びかけた。

　本題の「勝者の思考法」では、「勝ちたい人は、準備しなさい」と、「準備力」の大切さを説いた。過去の金メダリストたちがいかに準備していたかについて、いくつかの実例をもとに紹介。「最悪を想定して、最良のカードを切る。それをやりきる決断力。判断ではなく、決断。強い人は決断できる」と語り、さらに「自分を追い込める人、追い込まれる人。追い込んで追い込んで強くなる。追い込まれる人は土壇場で力を発揮できない」という理論を披露した。

年末セールの対応が急務

　事例発表は二つ用意された。最初に登場したインターネット・ビジネス・フロンティアは、SEO（Search Engine Optimization）事業からスタートし、現在ではシステム構築までワンストップで提供している。そのサービスで、NCIのIaaS基盤「ZETA Cloud Private」を採用した経緯と成果を、宇都雅史代表取締役が説明した。

　以前、構築した顧客のネット通販サイトで、年末セールなどでアクセスが集中してシステムがダウンすることがあり、対応が急務となっていた。また、保守・運用工数の増大、サイトの成長に伴うインフラ増強、セキュリティ対応といった課題を抱えていた。そこで検討したのが、IaaS基盤の採用だった。それまではオンプレミス環境でシステムが稼働していた。「セキュリティを含めて、ワンストップで対応できるのは『ZETA Cloud Private』だけだった」（宇都代表取締役）。これによって、昨年末のセールは無事に乗り切ったという。

　ZETA Cloud Privateのよさを実感している宇都代表取締役だが、あえて課題も挙げた。その一つがコスト。見えないコスト削減があるとはいえ、旧環境よりもコストが約20％上がっているという。また、セキュリティについても、「どこまで必要なのか、状況に応じて最適な提案がほしい」と注文をつけた。

システム運用要員が不要に

　次に登壇したのは、NCIの運用代行サービスを採用している日立コンサルティング経営戦略部の荒井岳シニアディレクター。以前は、継ぎ足しでシステムを導入しており、コストダウンを図るのが難しい状況だった。また、システムごとに運用管理の担当が決まっていて、作業が属人化していたという。業務部門からの問い合わせへの対応も不十分で、苦情が多かった。

　そこで日立コンサルティングは、NCIの運用代行サービスを採用。同時にNCIが提供する「業務の標準化」のサービスを活用し、全体の最適化を進めた。この結果、システム運用要員が不要になり、IT要員は5人から2人に。その2名も、ベンダーマネジメントやガバナンスなどの付加価値業務に特化できるようになったという。TCO（総所有コスト）は37.6％減。業務部門の問い合わせ窓口はNCIになり、ユーザー満足度は95％アップした。荒井シニアディレクターは、「NCIはプロとしての仕事をきちんとやってくれる。IT部門への苦情がなくなった」と高く評価した。