燃えよユーザー会 ~もっとITを有効活用したいユーザー企業へ~

<燃えよユーザー会 ~もっとITを有効活用したいユーザー企業へ~> できていますか? ビッグデータ時代のデータ活用――アシスト ソリューション研究会

2013/12/13 20:28

 アシストは、12月10日、東京地区のユーザー会「ソリューション研究会」の分科会発表会を開催した。ソリューション研究会は、同社の製品とは関係なく、会員の関心が高いテーマで分科会活動をするユーザー会。今回は、東京地域で活動している8分科会の研究成果から、ビッグデータをテーマにした「企業における情報活用のあるべき姿と仕組みづくり分科会」の発表をレポートする。

ビッグデータ活用を阻む三つの壁

 現在、企業の意思決定にはビッグデータの活用が不可欠になり、企業活動のなかで大量のデータが生み出され、大量のデータを処理ができる環境が整った。これを「企業における情報活用のあるべき姿と仕組みづくり分科会」は、ビッグデータが「バズワード」から「時代」に変わったと捉える。

 ところが、分科会に参加している会員企業をみると、ビッグデータ時代の波に乗り切れていないのだ。「データ数が少なく精度が低い」「データに不備が多い」「データリストを採用したが成果が出ない」「データの活用方法がわからない」「ビッグデータ活用の重要性を会社が理解しない」など、事態は深刻だ。そこで対応策として挙がったのが、「分析の壁」「データの壁」「ROIの壁」という三つの壁の打破である。

第一幕:分析の壁

 ビッグデータ活用の最大の障壁は、ビッグデータを解析するデータサイエンティストの不足だといわれる。不足していれば育成すればいいのだが、データサイエンティストには、分析に必要な知識に加え、業務知識やITスキルが求められる。それぞれを得意とする人材でチームを組むという手もあるが、三つの能力をもつ人材を育てるのが理想だ。ただし、本当にそのような人材を育てることができるのか。

 分科会では、書籍や解析ツールなどを使い、「素人がデータ解析を習得できるか」をテーマに、データ解析について学ぶことから始めた。その結果得られた結論は、「学習したことをビジネスに応用できない」であった。原因は、アルゴリズムの選択と説明の難しさにあるという。

 「例えば、分析担当者が『ビニール傘と雨の相関が高いです』というと、それを聞いた上司が『何で?』と聞く。担当者の答えは『重回帰分析したらそうなったので』となってしまう」と発表者の山内裕永氏(日本ヒューレット・パッカード)。データ解析は習得が難しいうえに、ビジネスに応用できるスキルを身につけるのはそう簡単ではないという。こうした問題を考慮した山内氏の主張は、大学で統計学などを学んだ学生を採用して育てていくというものだった。

第二幕:データの壁

 ビッグデータを語る前に、企業が抱えるデータにはさまざまな問題が潜んでいることを認識しなければいけない。多くの企業は、ビッグデータ活用に取り組むにあたって「データが散在している」「データ集約にコストがかかる」「データ集約の基盤がない」「データに統一性がない」「そもそもビッグデータがない」などの問題でつまずくからだ。

 では、どこから着手すればいいのか。「われわれが考えたのは、データの先には人があるということ」と、発表者の吉田和弘氏(千代田システムテクノロジーズ)は切り出した。データ活用の目的は、すべて顧客につながるという。例として「顧客を知ることがデータ活用の目的」「ある商品の販売傾向分析」「この商品は誰が買ったのか」「その顧客はなぜその商品を買ったのか」などを挙げた。

 分科会では、顧客を知るためのデータを、デモグラフィック属性(性別・年齢・移住地・職業)、サイコグラフィック属性(価値観・ライフスタイル)、行動履歴(閲覧履歴・購買履歴)、コミュニケーションデータ(クレーム・VOC・口コミ)の4段階に分類した。そのうえで、構造化データかどうか、ビッグデータかどうか、入手しやすいかどうかなどの視点で考察した。

 その結果、吉田氏は「顧客を深く知れば、製品の改善点や新規製品の企画などで、うまくいく施策を考えることができる」という結論を導き出した。顧客を深く知ることは、企業の資産となるというわけだ。

第三幕:ROIの壁

 最後の壁は、ビッグデータへの投資の回収である。分科会では、ビッグデータへの取り組みで成功しているとされる10社の事例を分析した。そこからみえてきたのは、投資額が大きく、効果が出るまでに3~5年という時間がかかっているということだった。「成功企業は、会社がデータ活用目的を理解し、投資回収期間を長く捉えている」と、発表者の森川健氏(日本テクノス)。データ活用の投資回収期間が長期になれば、最悪の場合、数年たっても成果が出ないことになる覚悟が必要になる。

 ここまでの三つの壁の研究から、森川氏は「ビッグデータ時代のデータ活用は、『分析』『データ』『企業体制』の三つの観点が必要だが、とりわけ重要なのは、データ活用が中・長期的取り組みであるという企業の理解だ」とした。

異議あり!

 以上のまとめによって、分科会の発表は終わりとなるところだが、「異議あり!」と手を挙げて会場を沸かせたのが、アシストの佐藤彰広氏。「いくらデータ活用が重要だからといって、悠長に時間をかけていられない」「データ活用の成功例は、データマイニングの時から取り組んでいる人たちばかり」「データ活用ツールは進化していないのか」。つまり、過去の取り組みよりも、ビッグデータ時代を迎えたことによって、新たな展開があるべきではないかということである。現在のデータサイエンティスト任せの状況にも問題があるとした。

 ビッグデータを活用するために求められるツールの条件として、佐藤氏は、「表計算ソフトのように簡単に使える」「多額の初期投資を必要としない」「データ前処理など解析以外の時間の短縮化」などを挙げた。さらに、こうした条件を満たす次世代のデータ活用ツールが「徐々に登場してきている」として、まだ日本に入ってきていない解析ツールなどを紹介した。佐藤氏は、「データ分析のパラダイムシフトは近い。重要なのは、ビッグデータを使いこなすためのリテラシーをもつこと。そのためにも、次世代ツールに注目してほしい」とまとめた。

 分科会の発表は、このほか「スッキリ分かる! ネットワーク仮想化」「ITプロジェクトにおけるコミュニケーションのポイント ~失敗に学ぶ~」「導入効果も『倍返し』!? デスクトップ仮想化検討のポイント」「真のヒーローは君だ! ~BA組織の作り方を考える~」「ERMの基礎と応用 ~リスクをチャンスに変えるERM~」「IT環境変化に対し求められる人材像とその育成」「企業においてモバイル・デバイスを『もっと』活用するためのヒント」などのテーマで行われた。

分科会の発表で登場した4人。左からアシストの佐藤彰広氏、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の山内裕永氏、千代田システムテクノロジーズの吉田和弘氏、日本テクノスの森川健氏。
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外部リンク

アシスト ソリューション研究会=http://www.ashisuto.co.jp/corporate/user/solution-group/