視点

オリンピックと消費税、そして医療費の問題

2013/09/26 16:41

週刊BCN 2013年09月23日vol.1498掲載

 2020年の東京オリンピック招致が決定した。まずは、おめでたいことである。景気がさらに加速度的に回復する期待感も生まれてきた。

 政府は、来年の4月から消費税を3%アップする決断を10月に行うとしている。消費税がアップすれば、これに関連するビジネスも潤う。ITに関連するところでは、会計ソフトや、POSシステムなどが恩恵を受けることになりそうである。

 さて、このような状況のなかで、2012年度の医療費動向調査結果が発表された。医療保険と公費から支払われた概算医療費は、前年度比1.7%増の38兆4000億円となり、10年連続で過去最高を更新した。38兆円という数字は、日本の税収(直近では43兆円)に追いつくほどのとんでもない金額である。年金財政も話題になるが、実は、医療財政が深刻な問題となっている。年金は、何年後に新しく年金を受給する人が何人増えるということが予測可能である。しかし、医療に関しては、今後の予測が困難だという点も問題である。

 医療技術が進歩すれば、難病も治療できるが、医療費の支出は増えることになる。医療費に関して政府は、高額療養費の見直しを行うと発表した。

 高額療養費とは、1か月の病院代が一定額を超えたときに支払われる給付のことである。平成12年までは、1か月6万3600円を超える金額が、高額療養費として返ってきた。1か月入院して医療費の自己負担額が30万円程度になったとしても、所得にかかわらず6万3600円を超えて支払う必要はなかった。その後、改正が行われて、現在では8万100円に一定額を超えた医療費の1%を足した額を負担することになっている。さらに、給与が53万円程度以上の人は、ベースの8万100円が15万円となっている。

 この高額療養費を、所得に応じて細分化して、個人負担を増やす改正を行う予定である。この引き上げは、70歳以上の人の医療費の一部負担金を2割にすることと同時に行うとしている。

 最近、私は病院に二度行ったが、二度とも紙のカルテに記入し、データ化もされていないようである。医療費の増大に歯止めをかけるのは、IT技術であると確信している。個人の病歴や薬の処方歴などをデータベース化することが急務である。これにより、医療費は、かなりのムダが削減できるはずだ。

 医療技術は進歩しても、医療の管理という面では、ほとんど進歩がみられない。抜本改革が望まれる。
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