視点
ありふれたメッセージに込められた決意
2013/08/01 16:41
週刊BCN 2013年07月29日vol.1491掲載
デバイスもサービスも、IT業界のなかでは注目の分野で、言葉自体は新しくない。それだけに、あたりまえのように思えて、聞き流してしまいがちだが、マイクロソフトが発信することの意味は大きい。
マイクロソフトは、OSとオフィスソフトで圧倒的なシェアを握り、ソフトの販売が全売上高の大半を占める。ソフトをサービスとして提供するクラウドは諸刃の剣で、既存ビジネスを脅かす存在。それだけに、クラウドビジネスを手がけてはいるものの、及び腰な印象を受ける発言や施策がたびたびあった。もう使われなくなったが、「Software+Service(S+S)」という、ソフトもサービスもどちらも伸ばすというコンセプトを、マイクロソフトが3年ほど前まで打ち出していたことからも、それがうかがえる。
今回、メッセージのなかにソフトという言葉を消し、クラウドを中心としたサービスを強く打ち出したことは大きな変化で、「クラウドにコミットした証」だとマイクロソフトの幹部は語る。
一方、デバイス。今年、「Surface」という自社ブランドのタブレット端末を発売し、今年度第1四半期(2013年7~9月)中には、法人向けチャネルでも流通させることが決まっている。これまで、パソコンメーカーのビジネスを気にして、販売ルートを限定するなど、慎重な態度をとっていたが、ここにきて一気に「Surface」を拡販する姿勢を鮮明にしている。
自社の既存ビジネスとパートナーのビジネスへの悪影響を考えて、保守的に進めてきたサービスとデバイスのビジネス。それを今年度は、過去に縛られず、しがらみを取っ払って推進しようとしている。7月上旬に開かれたパートナーイベントでケビン・ターナーCOOはこう語っている。「(私たちには)プレッシャーがある。パートナーの皆さんもそうだろう。でも、共に進もう。ライバルに勝とう」。
ソフトの巨人が固めた決意。日本マイクロソフトの幹部は「ここまで明確なメッセージを出したのは初めて」と話している。ユーザーもパートナーも最多のマイクロソフトが動けば、業界の様子は一気に変わるはずだ。
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