視点
たそがれ時の日中関係を読む
2013/07/11 16:41
週刊BCN 2013年07月08日vol.1488掲載
上海のホテルのテレビに映る50局のうち、5局が尖閣諸島のニュース、5局が旧日本軍との戦争のドラマである。これが連日なので、当然ながら視聴者は飽きてくる。この飽き対策として、中国軍は毎日、尖閣諸島の日本領海に入らねばならない。ドラマ、これは見せる。今までのハゲで、チビで、デブの日本兵だけではない。ハンサムで極めて良識的な日本兵も登場する。そして筋書きが数段おもしろくなっている。日本軍との戦争のドラマはそれまで1局くらいだったが、急に増えた。新聞についていえば、5月15日の上海の主要25紙のうち尖閣列島のニュースが1面トップは3紙、各紙とも「安倍右翼政権」や「鬼子政治家日本維新の会橋下共同代表」の文字が踊る。
しかしながら、多くの中国人は、反日にも尖閣諸島問題にもほとんど関心がない。私は、今回の8日間の滞在中、反日おじさんには一人しか会っていない。街でタクシーに乗せてもらえないこともないし、飲み屋でからまれることもない。中国の政府やマスコミの対応と一般の国民の意識にはかなり大きな差があることがよくわかる。
現在の中国の経済は、円安・元高、不良債権問題、賃金高、供給過剰などで経済が減速している。だからといって、ざまあみろということにはならない。中国経済は日本経済と連結していて、すぐに影響が及ぶからだ。現に、このバブル経済の崩壊で日系の建機メーカーの敷地は在庫の山である。中国経済が以前と異なって不透明な経済となり、かつ尖閣諸島問題というトゲが当分抜けないということは、日本企業の中国ビジネスはこれまでのようには進まない、世界経済は今まで通りには運ばないということでもある。
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