地方ITビジネスの羅針盤 各地の動きに成長の萌芽をみる
<地方ITビジネスの羅針盤 各地の動きに成長の萌芽をみる>石川県の動きに成長の萌芽をみる(3) ――[県内の中小ITベンダー]ニッチ商材で全国展開に成功
2013/06/27 20:29
週刊BCN 2013年06月24日vol.1486掲載
協業を念頭に製品展開
三國浩明社長
ターゲットについて三國社長は、「全国に建設業は約70万社あるが、そのうちの約20万社が当社のターゲット。売上高が2億円前後の小規模な建設業には、競合製品を提供しているベンダーがいて原価管理システムは浸透しているが、5億~300億円の20万社には、まだ10%ほどしか浸透していない」とみている。競合の攻め切れていないところにターゲットを絞り込むことで差異化を図っている。
製品自体にも、工夫を凝らしている。Excelを使って帳票の印刷書式を作成・編集できる機能は、「競合にはない機能で、顧客からの評価が非常に高い」(三國社長)という。また、製品の開発当初からパートナー経由での販売を目指していたことから、あらゆる会計ソフトとシームレスに連動する機能を搭載。これによって、建設業をターゲットとする会計ソフトベンダーとの協業を狙った。実際に、オービックビジネスコンサルタント(OBC)や応研など、約600社との協業を実現している。このことが販売網を全国に広げ、売り上げが向上するきっかけとなった。
さらに、パートナーとの関係を強固にするために、人材育成の面では、原価管理だけでなく、会計の知識を習得させている。中途採用では、簿記2級以上の資格を保有していることが必須条件となっている。原価管理と会計の両方を熟知した人材を育成して、製品開発や営業活動で、パートナーとの信頼性の向上に役立つ提案ができるようにしているのだ。
こうした戦略によって、「どっと原価」は、これまで約1800社が導入。会社の売上高は年平均で28%成長している。三國社長は、「手広く製品を揃えるのではなく、ニッチ市場に特化しているからこそ、他社には真似ができない製品に仕上げられた」と強調する。
市場形成前に製品を投入
穴田幸雄社長
今でこそ「Flowers NEXT」はコンダクトの収益の8割を占める事業となっているが、もともとは受託ソフト開発が中心事業だった。開発のきっかけは、1992年に老人保健施設向けの医療保険請求システムを受託開発し、「これを応用すれば全国の介護福祉施設に販売できる」(穴田社長)という着想を得たことだ。一度開発したシステムなので、パッケージ化することは難しくはなかった。
現在、介護保険システムを提供する競合は増えており、ニッチ製品ではなくなってきているが、実は、2000年に介護保険制度が施行される以前は、介護保険システムを提供しているベンダーはほとんどなかった。コンダクトは市場形成前に商品化していたので、施行時には顧客のニーズをよく把握していた。だから、大手ベンダーが続々と参入するなかにあっても、全国の約3000事業所に約5100台の「Flowers NEXT」を導入することができた。
競合ベンダーが増えているものの、穴田社長は、「介護市場全体が伸びていることを考慮すれば、まだまだ獲得できる顧客は多い」とみている。介護保険制度は3年間に一度は法改正が行われる仕組みになっており、ベンダーは自社製品を随時対応させていく必要があるので、これから新たに参入しようとするベンダーにとって、障壁は決して低くはない。コンダクトでは、こうした法改正にも柔軟に対応できるように、すでにクラウドサービス型での提供を開始している。ユーザーの利便性を向上して、競合他社に負けない製品に進化させているのだ。
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