視点

新しいモバイルOSがアプリの変革をもたらす

2013/06/13 16:41

週刊BCN 2013年06月10日vol.1484掲載

 MWC(Mobile World Congress)で発表されて以降、Firefox-OSの話題が熱い。展示されていた端末は軽快に動き、ブースには黒山の人だかりができていた。すでにKDDIをはじめ、グローバルでも多くのキャリアが採用を表明している。新モバイルOSの「Ubuntu-touch」も会場に披露されていた。4年もの開発期間をかけただけあって、洗練されたユーザーインターフェースと安定感のある動作はLinuxの本流を感じる。

 さらに「Tizen OS」。サムスンのApple/Google対抗の姿勢が色濃くみえるが、クールな画面と高機能な機種の開発も視野に入れたOSとしては、開発に名を連ねるNTTドコモをはじめとするキャリアにも魅力的に映っているに違いない。これらのスマートフォン向けの新OSはWeb-OSと呼ばれ、これまでの端末側でネイティブ開発したアプリケーションを動作させるものとは異なり、ウェブブラウザ上で動作することを前提とした基本ソフトウェアセットになっている。

 ユーザーが利用するアプリケーションがウェブベースのものにシフトしていること、ハードウェアの機種依存性のないアプリケーション動作環境を担保しようということ、HTML5の登場によってネットワークドキュメンテーションからネットワークアプリケーションへのウェブの変化が起こっていること──などが背景として考えられる。

 しかしながら、ユーザーインターフェースは、結局のところそれほど変わり映えがしないともいわれている。iPhoneで実現したタッチデバイスの標準的なインターフェースは、すでにAndroidなどでもお馴染みのアイコンの並んだものであって、ユーザーが想定できる範囲を超えないものであろう。さらにこれらの新OSは開発者がハードに依存せずに開発できるというメリットや、通信キャリアにとってプラットフォーマーに牛耳られないビジネスモデルを構築できるメリットがある一方、エンドユーザーにとっては安価なモデルがリリースされる可能性があること以外、あまりメリットがないという話も出ている。

 新OSの登場に伴い、企業がモバイル端末を導入しようとする際には、検討すべき選択肢が複雑化し、導入の難易度やサポートの柔軟性、OSの継続性、コストといった観点からしてもこれまで以上に評価が難しくなってきている。エンタープライズアプリケーションのつくり込みは、モバイル対応が主流となりつつあるなか、個々のプラットフォーム対応のアプリをつくるよりも、HTML5でのウェブアプリ化もにらんだロードマップを描くことが必要になりつつある。
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