視点

次のIT市場は、ずばり「ASEAN5」

2013/04/04 16:41

週刊BCN 2013年04月01日vol.1475掲載

 尖閣諸島に関する日中両国間の問題は、日本企業の海外投資を「ASEAN5(インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア)」やインドに向かわせた。国際協力銀行の調査によれば、繊維、石油・ゴムなど原材料系を中心に42.8%の企業がこの問題でマイナスの影響を受けた。これにより、新興市場の有望国だった中国の再評価が進んだ。一方でタイが洪水被害から立ち直り、インドネシア工業地帯の魅力も増し、日本の企業を「中国以外」の投資に走らせている。

 日本貿易振興機構(JETRO)の統計では、依然として販売・生産・研究拠点の総計で中国が3割程度を占める。だが、尖閣諸島問題が起きて以降、とくに大企業の販売機能をもつ拠点としてタイ、インドネシア、インドの増加が目立ってきた。かつての日本の製造業は労働賃金の安さを求めて、生産拠点を日本から中国へ移してきた。この動きに呼応して、中国を「市場」と捉えて、小売・流通業を中心に進出するケースが目立つようになった。現在、ASEAN5やインドに起こっている現象は、販売と生産の両機能が同時に起き上がるラッシュのタイミングにあるとみていい。

 タイに生産拠点を構える日系企業を訪問すると、2011年の洪水からの復旧に向かう過程にあって、自動車や食品関連を中心とする製造業の設備投資が急速に増えている様子がうかがえる。中国で部品を製造し、タイ拠点が組み立て工程を担い、日本で最終仕上げをするというグローバル体制でサプライチェーンを構築する構図だ。頻繁にタイを訪れるビジネスパーソンは、「日本へ向かうタイ人旅行者が増えた」という。タイでは、昨年の政権交代で最低賃金を2倍程度に引き上げたことも旅行者の増加につながっているが、中国の取りこぼし資金がタイに回っているとも思える。

 この潮流は、日本の情報サービス産業も、しかと認識しておく必要がある。海外拠点が増えれば増えるほど、そこにITシステムの需要が生まれるからだ。生産管理システムを開発・販売するITベンダーの一社は、タイ、インドネシア、シンガポールの生産工場設立が増えていることを踏まえて営業拠点を増設し、販売パートナーとの支援体制を急ピッチで整えている。

 日本国内の情報サービス産業はここ1~2年、ターゲット市場を中国に絞る傾向があった。今後は、ASEANを含めたエリアで統合的に使える「グローバルITシステム」を開発し、販売できる体制を整備する必要性に迫られるはずだ。
  • 1

関連記事

国内有力ITベンダー ASEAN地域を重要地域に定める 複数の社長が方向性を明言

「NetEvents 2013 APAC Press Summit」がタイで開幕、基調講演でONFがSDNをアピール

MIJSコンソーシアムの第8回海外展開委員会、マレーシアの立地適性を紹介