視点
このままでは医療保険制度が崩壊する
2013/02/21 16:41
週刊BCN 2013年02月18日vol.1469掲載
円安は、税と社会保障の一体改革のなかで、消費税を引き上げたい政府の思惑が働いている。円安誘導とともに、公共事業を拡大して、短期的な景気回復につなげる狙いである。しかし、素直に喜べない現実もある。税と社会保障の一体改革は、まだ始まったばかりで、消費税の引き上げ幅を5%にすれば解決するような問題ではない。
最近、2011年の国民健康保険の財政が発表された。3000億円を超える赤字である。しかも近年は、赤字が続いている。国民健康保険は市区町村が母体となる医療保険制度で、財源不足の市区町村にとっては大きな負担となっている。全体としての医療保険財政も年々悪化している。直近の1年間の医療保険の支払い総額は30兆円を超えている。平成元年度が19兆円程度であったことを考えると、1.5倍以上になっているのだ。
今後、医療費もさらに増加することが予想されており、さらなる保険料の引き上げか、給付の削減策をとらない限り、制度自体の存続も怪しくなる。
医療保険制度の財源不足の問題は、高齢化の進展による医療費の増大だけではない。医療の仕組み自体にもムダがないのかを考えなければならない。
例えば、個人の病歴などを管理するシステム。これがあれば、医療費も抑制できるのではないか?
私たちは、病気に罹って医院へ行くと、まずは紙ベースの問診票に過去の病歴や投薬によるアレルギーの有無などを記入する。これらの作業がムダだと感じるのは私だけではないはずである。詳細に病歴等を記載しても、初診料は支払わなければならない。
これこそ、ITシステムで解決できる問題ではないのか。医療ネットワークシステムを構築して、個人の治療等の履歴が短時間で検索できるような仕組みが必要と考える。このことによって、効果的な治療や投薬が可能となり、ひいては、医療費の削減にもつながっていく。
インターネット社会のなかで、医療の分野は遅れている面がある。個人情報の問題、医療機関の投資の問題、さまざまな問題点があり、いまだに遅れたシステムになっている。だが、抜本的な改革をしなければ、人口減少社会と高齢化に対応できないのではないか。
本質を見据えた抜本改革が今こそ必要と考える。
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