IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>114.日伸貴金属(上) ウェブサイトから新規顧客を呼び込む

2013/02/14 20:29

週刊BCN 2013年02月11日vol.1468掲載

 日伸貴金属(上川一男代表取締役)は、経済産業大臣指定の伝統工芸品である「東京銀器」を手がける認定事業者だ。先代の名である「上川宗照」を継承する上川代表取締役と、息子、娘を含めた5人の家族が銀器職人として働いている。

 日伸貴金属の収益源の一つは百貨店を通しての販売であるが、近年、百貨店の業績が悪化したことで、銀器をあまり取り扱ってくれない店舗が増えていた。そのため、売り上げが減少したうえに、新規顧客との接点がなくなるという問題を抱えるようになった。上川代表取締役は、「職人は、つくることが仕事。だから、“売る”ことについては、ノウハウがなくて、どう対処したらよいのかわからずお手上げだった」と当時を振り返る。

 「東京銀器」を提供する認定事業者は、日伸貴金属のほかにも25ほどあるが、みな同様の悩みを抱えている。しかし、「後継者がいない事業者は少なからずいて、自分の代で終わってしまうのならば、このまま対策を打たなくても十分だと考える人もいる」(上川代表取締役)。一方で、日伸貴金属は、後継者を4人抱えており、末代まで「東京銀器」の技術と事業を引き継ごうと模索していた。そこで、ITコーディネータ(ITC)の野中栄一氏に相談して、顧客接点の増加を目的にウェブサイトを構築することにしたのだ。

 ウェブサイト構築にあたっての課題は、サイトを訪れる人に対して、どうやって「東京銀器」をブランドとして効果的に伝えるのかということだった。「銀のことは知っていても、『東京銀器』のことを知っている人はそれほど多くない」(上川代表取締役)という実情があったからだ。また、「購入者のなかには、銀の硫化を防ぐ方法や、黒ずんでしまったときの対処法を知らないために銀器をうまく扱えずにいる人もいる」(上川代表取締役)ことから、銀の扱い方も伝える必要があった。

 そこで、日伸貴金属は、ウェブサイト上に高級感を感じさせる作品群や、伝統技法に関する情報を掲載するだけでなく、閲覧者を工房に誘導して、実際に実物に触れてもらえるように工夫を凝らした。(真鍋武)

江戸時代から続く伝統の技
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