視点

クラウドの普及に欠かせない二つの鍵

2013/01/31 16:41

週刊BCN 2013年01月28日vol.1466掲載

 クラウドコンピューティングが普及するうえでは、構築、導入、運用の「自動化」と「セルフサービス化」の二つが重要な鍵となる。クラウドサーバーファーム上での仮想サーバーの構築からOS、アプリケーションの導入に至るまでのプロセスはすでに自動化が推進されているが、それに加えて、クラウドサーバーファームそのものの構築やネットワーク構築の自動化さえ今や実用段階に入ろうとしている。これに伴い、クラウドサービスの購入、ユーザー組織内への導入、運用管理などのプロセスの自動化、セルフサービス化の技術的枠組みについてもようやく関心を集めるようになった。

 廉価なクラウドサービスの販売を促進するには、それを販売するプロセス自体に加えて、購入して利用する個々のユーザーに割り振るプロセスを自動化する技術的枠組みが必要になる。要は、クラウドサービスを購入し、組織内へ導入するプロセスのなかに、コスト要因の大きな部分を占める人的処理が介在することを極力排除しなければならないということだ。この意味で、できるだけユーザー自身によるセルフサービス化が望ましいことになる。

 しかしながら、どのようなクラウドサービスでもユーザー自身のセルフサービスで導入できるというわけではない。利用するクラウドサービスに対するユーザーのリテラシーレベルが十分でなければ、第三者のサポートが必要になるケースも少なくない。例えば、メールやグループウェアであれば、簡単なマニュアルとオンラインヘルプさえあればセルフサービスによる導入、運用管理も可能であろうが、顧客管理や会計管理となると第三者による導入、運用サポートを必要とするユーザーは少なくないだろう。

 したがって、クラウドサービスを利用するにあたり、その導入、運用管理の過程で必要とされるサポートの種類とレベルをユーザー個々のリテラシーレベルに応じて自由に選択できる仕組みが必要になる。しかし、このようなサポートサービスは人的処理に頼らざるを得ないので、クラウドサービスのコスト要因として無視し難く、クラウドサービスの普及を阻害する要因となる懸念がある。これを回避するには、サポートもまた必要なときに必要な分だけ利用することができるオンデマンドサービスとして廉価に提供されねばならない。残念ながら、これを実現するための組織や人材については、未だ十分に議論されたり、考察されたりしているとは言い難い状況にある。

一般社団法人みんなのクラウド 理事 松田利夫

略歴

松田 利夫(まつだ としお)
 1947年10月、東京都八王子市生まれ。77年、慶應義塾大学工学研究科博士課程管理工学専攻単位取得後退学。東京理科大学理工学部情報科学科助手を経て、山梨学院大学経営情報学部助教授、教授を歴任。90年代に日本語ドメインサービス事業立上げ。以降、ASP、SaaS、クラウドの啓蒙団体設立に参加。現在、「一般社団法人 みんなのクラウド」の理事を務める。
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