視点

メンテナンスが不可欠な太陽光発電システム

2012/12/27 16:41

週刊BCN 2012年12月24日vol.1462掲載

 7月にスタートした「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」により、太陽光発電の設置が急激に進んでおり、10月末までに設備認定を受けた太陽光発電は住宅用・非住宅用合わせて約220万kWにも及ぶ。一般的に太陽光発電は、モジュールに可動部分がないことから「メンテナンスフリー」といわれてきたが、欧州ではメガソーラーの出力低下が相次いでおり、太陽光モジュール製品の品質が問題となっている。これは、PID(Potential Induced Degradation)現象と呼ばれ、太陽光発電を高電圧で回路設計すると、モジュール回路とフレームに電位差が生じ、高温多湿といった外部要因が加わることで、電流漏れが発生して出力が落ちることになる。

 ドイツに本部を置く欧州最大の研究機関であるフラウンホーファー研究機構は、耐PID試験を世界13社の太陽光モジュールを対象に行い、その調査結果を公表している。出力低下がまったくみられなかったメーカーはわずか4社で、残り9社はPID現象が確認された。しかも、9社の出力低下率平均は56%で、最大90%以上も出力低下する太陽光モジュールがあった。90%以上も出力が低下すれば、ほぼ発電していないのと同じということになる。欧州では、この2~3年でPID現象が多発しており、売電事業目的で設置した場合は当然ながら売電収入が減少し、事業損失の大きな原因となっている。日本はこれから本格的に太陽光発電事業が始まるわけだが、太陽光モジュールメーカーを選定する際には、耐PID試験結果で出力低下しなかったかどうか、出力保証制度があるかどうかなどを必ず確認する必要がある。

 また、この問題以外にも太陽光モジュールの回路の一部が日陰になる状態が続くと、発熱してセルを破壊する「ホットスポット」という現象もあり、同様に発電量の低下の原因となっている。太陽光モジュール以外にも、太陽光で発電した直流電流を交流電流に変換する「パワーコンディショナー」は、10年程度で修理か交換が必要な機器となっているので、そのコストは事業計画に支出として組み込んでおく必要がある。

 決して「メンテナンスフリー」ではない太陽光発電システムで、20年間の買取期間を念頭に置いて当初の事業計画通りに収益を上げていくためには、専門業者と保守・管理を契約し、発電システムの現地での定期的な点検や、気象条件に適した発電量が出力しているかどうかの発電量監視を行い、少しでも早くシステムの異常を把握し、必要ならば改修工事を行うべきだ。
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