視点

再生可能エネルギー買取り制度の失敗に学べ

2012/11/08 16:41

週刊BCN 2012年11月05日vol.1455掲載

 今年7月にスタートした再生可能エネルギー固定価格買取制度は、9月末段階の設備認定が178万kWとなり、わずか3か月で年度末導入目標250万kWの7割に到達した。なかでも太陽光発電は148万kWの設備認定と、大半を占める。毎日のように大手企業や自治体等によるメガソーラー建設の発表が相次ぎ、まさにソーラーバブル元年といえる。

 現在、あるメーカーからの太陽光関連機器納入は8か月待ち、設置工事業者は来年3月末まですでに工事で予定が埋まっている状態なのに、さらに次々と工事依頼が入ってくる状況だ。

 再生可能エネルギーは、エネルギー環境政策において自給率向上、原発依存率低下、CO2排出削減といった効能だけでなく、内需経済、とくに地方における経済活性の一翼を担い始めているといえる。

 一方で、固定価格買取制度先進国のスペインやドイツでは、急激な市場拡大によってサーチャージ(賦課金)の負担が増大したことから政策転換を行なった結果、逆に市場が急激に冷え込んでしまい、最大手の太陽光メーカーも倒産に追い込まれた。

 固定価格買取制度は、技術革新と需要拡大を進めるための先行投資である。初期設備費用単価が下がることを想定したうえで、買取価格も徐々に下げていくことを前提とする制度であり、再生可能エネルギーの発電コストがグリッドパリティを迎えれば、この制度は必要なくなる。つまり、電力の自由化とともに一つの事業として形成されることを目的としているのだ。

 グリッドパリティとは、現行の電力コストと等価になることであり、2009年6月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公開した太陽光発電ロードマップ(PV2030+)では、2020年に14円/kWh、2030年に7円/kWhを技術開発目標としている。したがって、それまでの政策のかじ取りを誤れば、バブルが弾けてエネルギー環境政策のみならず、地域経済や国内大手製造業にも大きく影響を及ぼすことになる。だからこそ、スペインやドイツの失敗から学び、同じ轍を踏まないようにする必要がある。

 また、並行して新しいセル・蓄電池素材の開発やモジュールなどの低コスト化技術開発などの先端基礎技術の支援を継続的に行いながら、ある程度実用化レベルに達した先端技術は製品化して市場に出していき、遅れがちなグリッドパリティの到達年数を早めるための指針を示すことも重要と思われる。
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