日本クエストのソフト群に見る一考察
<使いやすいIT管理製品とは?――日本クエストのソフト群に見る一考察>3.オラクルDBの複製ソフトとして急成長 修復、監視、アラートなど1製品に集約
2012/11/01 20:29
週刊BCN 2012年10月29日vol.1454掲載
日本クエスト・ソフトウェアが、「SharePlex for Oracle」を日本市場で販売を強化し始めたのは、昨年7月に米バックボーン・ソフトウエアを買収した頃からだ。それまでは、顧客の要望を受け、必要に応じて提供してきたが、システム変更のニーズが高まる時期に入って、販売を拡大することができると判断した。Quest社の製品は、多くが相次ぐ買収で得た製品で構成されている。だが、「SharePlex for Oracle」は、同社のオリジナル製品で、DBメーカーのオラクル、IBMに匹敵する市場シェアをもつ“枯れた”ソフトである。
「SharePlex for Oracle」は、オラクルが保有する複製ソフトに対する代替え製品を、低価格に提供できる。オラクルなどの複製ソフトと異なり、データ比較や修復、監視やアラート機能などをすべて一つのパッケージが担う。例えば、Oracle Database 9iから同11gへデータ複製する際などに、ビジネスの継続性を確保しながら、データベースの運用目標やOLAPシステムのパフォーマンスや可用性に影響を与えずに、運用中のデータをほぼリアルタイムにコピーできる。
システムコンサルタント
青木浩朗 氏
「SharePlex for Oracle」に対するニーズは、UNIXにあるDBを新たなIAサーバーへ移行したり、Oracle DBのバージョンアップ、DBに保存するデータを直接アクセスせずBI(ビジネス・インテリジェンス)の参照用として使うなど、日本クエストの想像を越えた多用途での利用が進む。青木システムコンサルタントは「日本の顧客の場合は、Oracle DBの古いバージョンを使っている割合が高い。また、システムを再構築する際に、高価な『Oracle Database Enterprise Edition』にあるデータを安価な『Standard Edition』に複製するニーズが高い」と話す。
本格展開からわずか数か月ながら、中堅・大手企業を中心に多くの事例が出ているのも、「SharePlex for Oracle」の特徴だ。例えば、福島県いわき市を中心に展開するスーパーマーケットの「マルト」は、東日本大震災の災害を受けて、Oracle DB上で稼働する財務会計と人事給与システムのディザスタ・リカバリ(DR)対策の一環でこのソフトを採用した。
これまでは、各店舗のPOSデータなどを外部のデータセンターにハウジングしたサーバーに保存し、ASP方式でデータ利用してきた。だが、災害を教訓として自社で管理する他のOracle DB上のシステムについて、バックアップ環境を再構築した。「『SharePlex for Oracle』は、完全にデータの更新情報だけをテーブル単位で限定しながら転送でき、少ない通信トラフィックで複製を実現する。また、複製元で障害が発生した場合には、複製先にアクセスを切り替えるだけで短時間による復旧が可能なことが採用の決め手となった」(青木システムコンサルタント)という。
また、外国為替証拠金取引(FX)サービスを提供するセントラル短資FXは、取引システムにOracle DBのEnterprise Editionを採用し、クラスタソフト「Oracle Real Application Clusters(RAC)」で拡張性を確保していたが、負荷の重さに悩んでいた。一方、同社では顧客向けのリスク管理システムなどの新サービスを検討するなかで、DBの拡充を選ばず、「SharePlex for Oracle」を使った。基幹DBから複製を行い、複製データを参照してこの顧客サービスを構築し、内部的な経営分析用のレポート作成にも活用している。
青木システムコンサルタントは、「『SharePlex for Oracle』がすぐれているのは、Oracle DBのログファイルだけをチェックし、変更情報を送っている点にある。直接、Oracle DBにアクセスしないので、安全に複製作業ができる」というように、これらの特徴的な機能を使って応用できる幅は広がりそうだ。
次回は、「SharePlex for Oracle」と同様に販売を急速に伸ばしている仮想化環境のパフォーマンス監視ソフト「vFoglight」を紹介する。
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