視点
地図を巡るアップルとグーグルの摩擦
2012/10/25 16:41
週刊BCN 2012年10月22日vol.1453掲載
アップルが採用したこの新しいOSの地図ソフトには数多くの間違いが指摘されている。例えば、羽田空港の真ん中に大王製紙があったり、日の出桟橋の沖合に東京都公文書館があったり、首相官邸前に日比谷高校があったりする。つまり、地図が不正確なのである。ちなみに、アップル本社がある米国でも、企業や歴史的建造物の名称が間違っていたり、道路や川が正しく表示されなかったり、建物の位置が間違っていたりするなどの問題が指摘されており、アップルのクックCEOも地図の品質が十分でないことを認めている。
モバイル機器のユーザーを対象とする調査を行っているOn Deviceが最近実施したアンケート調査によれば、新しい地図ソフトを搭載したiOS 6の満足度は7.65で、iOS 5の7.75からわずかに低下している。この満足度低下は、おそらくこの地図ソフトの欠陥が原因だろう。
しかし、なぜアップルはiOS 6の地図ソフトをグーグルマップから出来の悪い自社製の地図ソフトに切り替えたのだろうか。『ウォール・ストリート・ジャーナル』の報道によれば、その理由は、アップルとグーグルの対立にあるらしい。
アップルは携帯端末の地図ソフトで「ターン・バイ・ターン」を実現したいと考えた。ターン・バイ・ターンとは、交差点などで進路を音声などで示すナビゲーション方式である。すでに多くのカーナビゲーションシステムで採用されているし、グーグルのOSであるアンドロイド上でも実現されている。ところが、iOSのグーグルマップ利用の契約には、このターン・バイ・ターン機能の利用が含まれていないのだ。
アップルはグーグルにターン・バイ・ターン機能の提供を要請したのだが、グーグルがこれを拒否したか、あるいはライセンス料金で両者は合意に達しなかったかだ。それで、仕方なくアップルは自社の地図ソフトを採用したのである。
この地図ソフト騒動は、携帯端末、携帯ソフト、位置情報関連広告等の市場をめぐるアップルとグーグルの熾烈な争いがもたらした悲喜劇なのである。
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