視点

レゴ方式か、SI主体か

2012/10/18 16:41

週刊BCN 2012年10月15日vol.1452掲載

 デンマークで生まれた玩具「レゴ(LEGO)」。プラスチック製のブロックを組み立てて、写実性のある形をつくる単純明快な遊びを提供する。創業は1934年。今も世界中に熱狂的な愛好家が多く存在する。ウィキペディアは、レゴのビジネスモデルを次のように記述している。「時代やシリーズを超越して共通する互換性という特徴がある」。例えば、10歳の子どもが1歳の頃につくったレゴ作品に、新たに発売されたレゴブロックを足して別の作品を創造することができる。統一規格のブロックは過去のブロックとも互換性をもっているので、玩具がゴミになってしまう“無駄”がない。世代を越えて利用できることが、レゴを支えているというのだ。

 現在、新たにITでつくるシステムは、多くがスクラップ・アンド・ビルドの繰り返しだ。過去との互換性がなく、新たな技術で、まったく別のモノをつくる“無駄”がある。新たにシステムをつくらず、インターネット上のサービスを利用するクラウドの普及に伴って、今、世界的なITベンダーであるマイクロソフトやオラクル、IBM、あるいは台頭著しいセールスフォース・ドットコムなどが、オープンで標準化された技術で自前の共通基盤の整備を強化している。クラウドとオンプレミス(企業内)システムを共有するなかで、新たにつくる“無駄”を省くためだ。

 彼らITベンダーは、自社の共通基盤上で、標準化された“ブロック”を組み立てれば、一定のITシステムを簡単に築くことができるという単純明快な仕組みづくりに懸命だ。クラウド利用の拡大を契機に、「もう、つくり過ぎはやめよう」とスクラッチ(手組み)開発に警鐘を鳴らしているとみることもできる。

 標準化技術でつくられた究極の共通基盤が、オラクルの「Exadata」やIBMの「PureSystems」など、ハードウェア、ミドルウェア、ネットワーク環境が最適化された垂直統合型の製品だ。ユーザーは、「オラクル版レゴ」や「IBM版レゴ」で用意した「ベストオブブリード(同一アーキテクチャの製品)」のブロックを、「ビルディングブロック(ブロック単位のモジュール増設)」方式で組み立てれば、最適なシステムを安価に、短期間に構築できる。

 われわれは、この現象を過去に経験している。そう、IBMのメインフレームが日本市場を席巻したときだ。今回は、日本メーカー版のレゴをつくるのか、昔のように外資系の標準に従うのか。それとも、SI(システム・サービス)主体に転じるのか。世界的に日本の大手ITメーカーの影が薄くなりつつあるなかで、待ったなしの選択を迫られている。
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