IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>96.大津鉄工(上) ITで不況に打ち勝つ

2012/10/04 20:29

週刊BCN 2012年10月01日vol.1450掲載

 愛知県に本社を置く大津鉄工(大津尚彦社長)は、土木建築用基礎ボルトをはじめとする建築部材の専門メーカーだ。2008年に起きたリーマン・ショックや公共工事の予算削減の影響を受けて、建築業界は売り上げと利益の減少に直面する厳しい時期を迎えている。これまでのように、大手施工事業者からの受注に頼る下請けに甘んじたままでは、さらに厳しい状況に陥る可能性がある状況だ。

 大津鉄工が戦略的にIT活用に乗り出したのは5年ほど前。当時は、多品種、短納期に対応した生産の合理化や製造・販売、現場施工を一体化した事業展開が求められていた。基幹業務をオープンシステムで統合し、RFID(ICタグ)などの活用を通じた各工程の見える化と改善を目指した。水口和美ITコーディネータ(ITC)は、幹部研修を実施して管理職の育成に携わった。「マネジメントを理解しなければ、ERP(統合基幹業務システム)の導入効果が期待できない」と考えたからだ。

 新たに導入したオービックのERP「OBIC 7」ベースのシステムは「O-TOS」と名づけた。第二弾として取り組んだのが社内コラボレーション基盤の構築で、アイ・オーシステムの「プロジェクト・グループウェア」を採用した。メール共有やデータ管理などに活用している。

 これをさらに推し進めたのが、社内、得意先、仕入れ先が情報を共有する「Dスルーランド」の構築だった。Dスルーとは、大津鉄工が開発し、同業者と共同で特許を取得した耐震基礎工事の「Dスルー工法」に由来する。業界団体のDスルー施工連絡会と有限責任事業組合(LLP)のDスルーを立ち上げて、中小規模の同業者が全国規模で連携。大手業者に対抗するかたちで、建築物の基礎工事を受注してきた。

 大手ゼネコンの場合、建築物件ごとにプロジェクトを設置し、それぞれのプロジェクトマネージャー(PM)は資材調達の権限をもっている。基礎工事を委託することになる仕入先の施工業者の場合も、同じようにプロジェクトごとに担当者が決まる。水口ITCは、「顧客の囲い込みはPMの囲い込みであり、本質的にはBtoBtoP(パーソナル)ビジネス」と説明する。(つづく)(信澤健太)

大津鉄工の愛知県弥富市本社
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