視点

エネルギーのベストミックスの本質を考える

2012/09/20 16:41

週刊BCN 2012年09月17日vol.1448掲載

 2030年におけるエネルギー基本計画の策定が延びている。ベストミックスとして原発の割合をどの程度にすべきかについて三つのシナリオを挙げ、対立軸に再生可能エネルギーを据えたことが策定を困難にしている。ある意味、安くて安定したエネルギーを供給することと、生活の安全を対立軸に据えた印象は拭い切れない。グローバル化・デジタル化の加速により、製造業を代表とする日本の産業も20年後を見据えた成長戦略のシナリオ策定が急務となっている。安全・安価で安定したエネルギー供給とともに、この分野で新たな成長戦略を策定することが求められている。例えば、米国のエネルギー革命は、「シェールガス」によってもたらされた。従来のガスの半額以下で取引され、米国エネルギー需要の40%を賄うことが期待されている。シェールガスは1800年代から生産されていたが、2000年代に入って人工的に採取する技術の革新により、埋蔵量の多い米国では一躍脚光を浴びるようになった。

 火山の多い日本では、再生可能エネルギーのなかでも安価で安定したエネルギーの供給ができる「地熱発電」に注目が集まっている。環境省による地熱発電のポテンシャル調査では、「導入ポテンシャル」で約1420万kWと報告されており、原発約14基分のエネルギーを賄うことができる。

 世界的にみても、フィリピンやニュージーランドなど、国策として地熱発電を推進しているところがある。そして、日本は地熱発電設備プラントの70%のシェアをもっていることから、この分野の技術革新の推進は戦略的に進める価値があると考える。不安定な太陽光発電や風力発電も、蓄電池の技術革新・低価格化と、IT技術による電力グリッド制御によって、安定的なエネルギーとして供給することが可能となる。蓄電池市場は、電力用・定置用・自動車用で2020年には20兆円市場になるといわれており、最近、韓国に抜かれたものの34.8%の世界シェアをもち、NAS電池やレドックスフロー電池など最先端の技術を保有している。日本は世界一安定していると評される電力グリッドを、計測・制御装置とIT技術の連携により、よりインテリジェント化することで、スマートグリッド市場を先取りすることができる。

 20年先を見据えたエネルギー政策は原発と再生可能エネルギーを対立軸とする単なるベストミックスの策定ではなく、世界に向けた新たな産業創造戦略の策定を盛り込んだ「挑戦」が必要であると考える。
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