IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>93.アクセス(下) 購読単価の回復を果たす

2012/09/13 20:29

週刊BCN 2012年09月10日vol.1447掲載

 起死回生の新規事業として、「ふれあいタウンひらかた朝日くらぶ」を始めた新聞販売店のアクセス。経費の削減を念頭に置きながらも、読者満足度の向上や地域貢献を狙って、地域の協賛店と提携して、会員である読者に各種サービスを提供している。

 最新ニュースの配布や年1回の全協賛店情報を掲載した保存版の発行、月1回のウェブサイト更新などを通じて、会員のサービス利用を促してきた。2011年8月、CMS(コンテンツ管理システム)のASPサービスを利用し、従来のウェブサイトを全面リニューアル。携帯電話でも閲覧できるようにした。カテゴライズの仕方や操作性の改善を図ったほか、コンテンツをリアルタイムに更新できる仕組みを整備した。

 同社では、「ふれあいタウンひらかた朝日くらぶ」事業を立ち上げる以前からITを積極的に活用してきた経緯がある。販売管理とCRM(顧客関係管理)にはASPサービス、社内文書の保管にはネットストレージを利用。各拠点とデータセンター(DC)間はVPNで接続し、社内データを一元管理したり情報共有したりできる仕組みを構築してきた。

 中小企業のシステムの開発・運用を支援してきたのが北大阪商工会議所だ。情報センターという部署でIT 関連事業を展開している。1972年にアクセスが新聞販売店共同利用システムを構築して以来のつき合いだ。

 「ふれあいタウンひらかた朝日くらぶ」は大きな成果を上げた。利益の圧迫要因だった購読提案の際の過剰な物品サービスを廃止し、強引な勧誘などで悪化していたイメージを改善。実質3500円台に落ち込んでいた月間の購読単価を3700円にまで回復することができた。

 長期購読者からは、「こういうサービスを待っていた」などの声が多く寄せられているという。購読者数は減少傾向にあるが、売上高を維持し、利益率は上昇傾向にある。

 村田孝義社長は、「『ふれあいタウンひらかた朝日くらぶ』を始めてから新聞の購読以外の訪問ネタが増えた。普段聞けない読者の不満を聞くためのいい機会になっている」と話す。

 同社を支援した若松敏幸・ITコーディネータ(ITC)は、「村田社長は新聞業界の将来に強い問題意識をもっている。中長期的な視点で取り組んでいることが成功につながっている」とみる。(信澤健太)


大阪府枚方市にあるアクセスの社屋
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