ITベンチャー新時代の鼓動

<ITベンチャー新時代の鼓動>第9回 トップシェアベンダーが語る成功の秘訣 技術系ベンチャーが陥りやすい四つの罠

2012/07/19 20:29

週刊BCN 2012年07月16日vol.1440掲載

 創業から14年──。トップシェア製品を開発・販売し、成長し続けているITベンチャー企業が存在する。インフォテリア(平野洋一郎社長)だ。XML技術をベースにデータ連携するミドルウェア「ASTERIA」で、EAI/ESB市場のトップシェア(本数ベース、テクノシステムリサーチ調べ)を握る。「ASTERIA」は、市場シェア46.9%を占め、12%の日本マイクロソフト「Microsoft BizTalk Server」を大きく引き離している。

 インフォテリアは、1998年、日本で最初のXML専業ソフトウェア・メーカーとして、ロータスで戦略企画本部副本部長などを務めた平野社長が設立したITベンダーだ。2000年、国内外の投資家から27億円の資金を調達し、2002年に「ASTERIA」の出荷を開始した。当時は、外資系製品が中心の市場だった。平野社長は、「外資系ベンダーの製品は1本5000万円の値をつけていたが、『ASTERIA』は500万円で販売を始めた。まずは数を押さえていくことを意識した」と話す。

 平野社長は、技術系ベンチャーが陥りやすい四つの罠を指摘する。「競合なし」「顧客の声」「受託開発」「融資」がそれだ。

 「競合なし」を強調することは、その製品に価値があるのかと顧客が疑問を抱くことを宣伝しているようなものだ。価値が高ければ競合が参入してくるし、投入する社内リソースは有限なので奪い合いが生じる。「ASTERIA」の場合は、日本マイクロソフトなどが競合となった。

 「顧客の声」は、製品開発の段階で重要ではあるが、「顧客は“形”にしないと、自身が何を欲しいのかわからない」(平野社長)ということを胆に銘じておく必要がある。「顧客の声を聞いてから開発しても遅すぎる。ニーズに応えるために多くの意見を取り入れても、妥協の産物になる」。インフォテリアでは、顧客の声を拾わずに「ASTERIA」の初期バージョンを市場に投入。アップグレードを迎える段階で、顧客の意見に徹底して耳を傾けた。

 「受託開発」は、「何でもできます」が裏目に出る。売り上げが増えても利益率は上がらない。案件数と規模に応じて開発者の確保も課題となる。自社開発製品であれば、一定数を販売すれば、大半が利益になる。

 金融機関からの「融資」は、当然ながら返済義務が生じるので、注意が必要だ。年間10億円を超える赤字を垂れ流していた時期があるインフォテリアは、銀行融資には頼らずにベンチャーキャピタルの投資だけに頼った。

 これら四つの罠は、いつの時代にもベンチャーを待ち受けているので、気が抜けない。(信澤健太)
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外部リンク

インフォテリア=http://www.infoteria.com/jp/