ITベンダーの企業系列マップ

<ITベンダーの企業系列マップ> 野村総合研究所(NRI) SIerトップで異色の存在

2012/06/21 20:29

週刊BCN 2012年06月18日vol.1436掲載

 野村総合研究所(NRI)は、SIerトップグループのなかでも異色の存在だ。コンサルティングファームとシステム開発・運用の機能が一体となって、情報サービス業全体のなかでワンランク上の収益力を誇る。この背景には、ユーザー企業のシステムを中長期にわたって安定的に運用していることと、もち前のコンサルティング力で業務改革(BPR)を積極的に提案していくすぐれた力がある。(取材・文/安藤章司)

ワンランク上の収益力 ユーザー企業の業務改革を推進

 日本初の本格的な民間シンクタンクとして発足した旧野村総合研究所と、野村證券の総合オンラインシステム開発を手がけた旧野村コンピュータシステムが1988年に合併したのが、野村総合研究所(NRI)である。主要顧客層の一つである証券業を直撃したリーマン・ショック以降、苦戦を強いられる場面が多かったが、直近の2012年3月期は売上高、営業利益ともに4期ぶりの増収増益で、リーマン・ショック以降のダウントレンドから復活する兆しがより鮮明になった。

 直近の営業利益率は約12.8%で、最盛期の15%余りに比べると若干低いが、それでも業界大手の水準からいえば高く、NRIの高収益力を実感させられる数字だ。その強固な収益基盤を支えている大きな要素の一つが、データセンター(DC)を巧みに活用したアウトソーシングサービスである。システムを構築し、ユーザーに納めてビジネスを完了する従来型のSIではなく、NRIはむしろ本稼働後の運用の請負で本領を発揮する。運用の標準化と効率化を徹底して行うことで、「運用開始から年数がたつごとに収益性が高まる」という取り組みを実践してきた。そして、ここで得た利益をユーザーに還元しながら、次のBPRに向けた改善策をコンサルティング込みで果敢に提案する。

 グループ戦略は、ライバル大手のNTTデータITホールディングス(ITHD)に比べると極めて保守的だったが、近年ではアジア成長市場の勢いに歩調を合わせるかのように、国内外でのM&A(企業の合併と買収)を活発に行っている。2011年10月にはインドの調査会社と資本・業務提携を行い、12年2月にはインドの有力ソフト会社をグループ化。国内ではグローバルカンパニーである味の素の情報システム子会社をグループに迎え入れるなど、グループ戦略を積極的に展開している。将来はアジアで“第二のNRI”を創出し、中・長期的に年率7%で売り上げを伸ばすビジネスモデルの確立を目指す。


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外部リンク

野村総合研究所(NRI)=http://www.nri.co.jp/