IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>81.広瀬製作所(下) 作業効率を大幅に改善

2012/06/14 16:04

週刊BCN 2012年06月11日vol.1435掲載

 精密板金加工を手がける広瀬製作所。経営環境が変わるなかで、迅速な業務改革が喫緊の課題となっていた。広瀬安行代表取締役は、「納期管理のノウハウはあっても、手作業だったのでタイムリーな管理ができず、通常業務に支障を来していた」と振り返る。

 同社を支援した坂田岳史ITコーディネータ(ITC)の主導で定めたIT戦略の道筋はこうだ。まずは、クラウド型システムを活用して業務オーバヘッドの低減を図り、試作などの高度技術を生かす環境を構築。次いで、試作受注から量産に移行する、というビジネスモデルの維持・発展だった。

 田中精工が開発したクラウド型生産管理システム「PT-SaaS」が業務改革の手段に選ばれた。坂田ITCは、機械部品の板金加工を手がける京都の製造業が「PT-SaaS」を導入するのを支援した経験があり、その特徴を理解していた。広瀬製作所は、カスタマイズして活用することを決めた。

 「PT-SaaS」は、生産計画作成や進捗管理、在庫・出荷管理、請求・売上管理などの機能を装備している。広瀬製作所向けには、案件ごとの作業指示一覧表(策定した生産計画を現場ですぐに見られる一覧表)や外注発注指示(外注工程の前工程が終了したものに限り、タイムリーに外注発注書を発行できる)、バーコードを活用した出荷管理(客先から送られてくるバーコード付き現品票を使っての出荷処理)などのカスタマイズを施した。

 EDI(電子データ交換)受信機能もあり、得意先のEDIフォーマットを自動的に変換できる。EDIフォーマットが異なる複数の得意先でも効率よく受注処理ができるようになった。

 導入効果は絶大で、現場への作業指示や計画変更のオーバヘッドが激減した。特急の試作品に対応する場合は、EDIで受信したデータを生産計画にいち早く反映できるようになった。加えて、バーコードの活用を通じて、出荷処理から請求処理までの一連の流れや在庫の更新を効率化できた。

 具体的には、EDI受注から生産計画までの作業効率が約80%、計画変更までの作業効率が約50%、在庫更新作業効率が約90%それぞれ向上した。このほか、工程・納期管理や品質・トレーサビリティ管理を用いて、作業効率を改善した。(信澤健太)

生産管理システムの操作画面
  • 1

関連記事

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>80.広瀬製作所(上) 経営環境が変化

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>64.NTB製作所(上) 業務の精度を向上

<IT経営の真髄 ITCの支援で企業はこう変わる!>65.NTB製作所(下) 顧客からの信頼を獲得