ITベンチャー新時代の鼓動

<ITベンチャー新時代の鼓動>第3回  大手ITベンダーが熱い視線  クラウドのエコシステムを形成

2012/06/07 16:04

週刊BCN 2012年06月04日vol.1434掲載

 クラウド・コンピューティングの普及によって、起業のハードルが下がった。大手ITベンダーのクラウド基盤を活用すれば、IT資産を所有せずに短期間でしかも安価にクラウドサービスを提供できるようになったからだ。ITベンチャーが開発するサービスの多くはクラウドネイティブである。

 日本マイクロソフトやセールスフォース・ドットコムといったクラウド基盤をもつ外資系ITベンダーは、ITベンチャー企業の支援策を積極的に打ち出している。狙いは、クラウド基盤を活用したのエコシステムの形成だ。「Windows Azure」環境を提供しているマイクロソフトは、(1)開発環境、(2)技術、(3)ネットワーク、(4)マーケティングの観点で、クラウド対応支援プログラムを用意している。

 具体的には、マイクロソフトの統合開発環境やクラウド環境などを最大で3年間無償化するというものだ。ITベンチャー企業は、「Microsoft Visual Studio with MSDN」の開発ツールやテスト環境用ソフトを利用できる。「Azure」は、月1500時間まで使い放題だ。開発時の技術的な質問も可能となっている。

 技術支援においては、オンラインで毎年1万ページの技術情報をはじめ、1900のコードサンプル、製品・技術ごとのフォーラムを用意。多彩なセミナーも揃えている。サービスの表彰やマスコミ露出の機会を得られるマーケティング支援、ベンチャーキャピタルとのネットワーク構築支援もあって、まさに全方位でITベンチャーの事業を手助けしている。

 日本マイクロソフトの福地洋二郎・デベロッパー&プラットフォーム統括本部パートナー&クラウド推進本部ビジネスデベロップメントマネージャは、「3か月で新しいクラウドサービスを開始できるようにするインキュベーションプログラムだ」とアピールする。

 インキュベーションプログラムには参加条件がある。事業開始から3年未満の場合は、「BizSpark」の加入のほか、選定会でサービスとビジネス、ビジネスプランの評価を受ける必要がある。設立3年以上の場合は、異なる内容のサポートを用意している。

 これまでに、イノテックやセカンドガレージ、マーベリック・ウェブ・ワークスといったITベンチャーのクラウドサービスが、マイクロソフトのエコシステムのなかで生まれた。イノテックは変形性膝関節症診断支援アプリである「KOACAD」、セカンドガレージは売り上げ情報の分析サービスである「Fast for EC」、マーベリック・ウェブ・サービスは日程マネジメントサービスである「ワークジャーナル」をそれぞれ提供している。(信澤健太)
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