ITベンチャー新時代の鼓動

<ITベンチャー新時代の鼓動>第2回 これまでの10年間を振り返る 失敗の連続、状況は変わるか

2012/05/31 16:04

週刊BCN 2012年05月28日vol.1433掲載

 2000年頃、ITベンチャー新時代が幕を開けた。渋谷にビットバレーと呼ばれるベンチャー企業の集積地が誕生。IT投資熱が高まった。しかし、インターネットバブルはあっけなく弾けた。多くのITベンチャー企業が立ち上がっては消えていき、とくに企業向けビジネスでの成功者はほとんどいなかった。目立つのはソーシャルゲーム会社などで、彼らはコンシューマ向け事業を手がけている。近年は、クラウドコンピューティングやスマートデバイスの普及、ビジネスモデルの変化などによってITベンチャーが活躍できる土俵が広がってきた。とはいえ、諸手を挙げて歓迎できる状況ではない。

 ITベンチャーの事情に詳しいジャパンベンチャーリサーチの北村彰会長は、「2000年頃にベンチャーファンドがつくられたり、株式公開関連ではマザーズ、ヘラクレスなど開設されたりして、ITベンチャーが生まれる環境が形成された。その当時は500~600社くらいがベンチャーキャピタル(VC)などから支援を受けて、株式公開するベンチャー企業も現れたが、ほとんどは成功しきれなかった」と残念そうな表情で語る。

 2005年頃には、有価証券報告書の虚偽記載で問題となったライブドア事件に代表される不祥事が起こり、ITベンチャーに対する投資は敬遠される傾向が強まった。2007年以降は、それがさらに顕著になり、資金が集まらないという状況に陥った。「資金が集まらず、上場するメリットは減った。上場しても株価が付かないので、VCは儲からないという構図が生まれた。へたをすると上場後のほうが上場前よりも企業価値評価が低くなった企業もある」(北村会長)。2011年以降も厳しいICTインキュベーション状況から抜け出せていないという。

 とはいえ、明るい材料がないわけではない。開発の資金や期間、販路の確保など、2000年頃の課題のいくつかは改善しつつある。クラウド・コンピューティングやスマートデバイス、ソーシャルメディアを活用した地に足のついたサービスが続々と登場している。

 起業のハードルが下がったことや投資先をスタートアップ企業に特化することで、多額の資金を必要としないベンチャーファンドが出現した。ビジネスコンテストやインキュベーション、出資をセットにしているのが特徴だ。2011年の調達額は2008年の60%にとどまり、1ファンド当たりの規模は低下傾向にある。一方で、VCが設立したファンドのうち、ITベンチャー企業を投資対象とするものは22にのぼり、2009年に激減する前の水準に戻った。(信澤健太)
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