視点
年金を政争の道具にする愚は避けよ
2012/05/24 16:41
週刊BCN 2012年05月21日vol.1432掲載
AIJ問題で浮き彫りになった、厚生年金基金の破綻の問題。結果的に国は救済をしない方針を決めた。中小企業経営者の退職金制度である小規模企業共済も、繰越欠損金が8548億円(2011年度末)に上る財政悪化となっており、120万人が加入している国の制度自体も崩壊寸前である。
財政難の社会保障制度のなかで、パートの厚生年金加入基準の見直し等、姑息な手段で保険料を何とか確保しようとしている。まずは、週20時間以上働くパートのうち、年収94万円以上、かつ従業員500人を超える会社で働いている人が加入対象となる予定である。このような小手先の改正を繰り返すことは、自殺行為である。社会保障制度のなかでも、年金制度は40年近く加入して20年近く受け取るという、半世紀を超える期間に係る仕組みである。この仕組み自体が途中で変更になれば、安心できる老後生活の設計すらおぼつかない。百年安心の年金制度はどこへ行ったのか。
公的年金をはじめとする、長期にわたる社会保険制度は、党派を超えて議論すべき問題だ。政争の道具にしているうちに、すべての仕組みが崩壊してしまいそうな気がしているのは私だけだろうか。
高齢化の進展は、ビジネスにも影響を及ぼしている。団塊の世代がいよいよ引退し、本格的に年金生活に突入し、需要が高まる「終活」「エンディングノート」などなど。私も、NHKのEテレ(旧教育テレビ)が始めた「団塊スタイル」という番組に出演した。タイトルからしてそのものズバリであるが、毎回面白い内容で構成されている。日本人は、こういった順応性があるから、最終的には大丈夫なのかもしれないが……。
(追記/6月8日金曜日の「団塊スタイル」には、年金問題で出演する予定です。もし、お時間があればご覧ください)
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