視点

インターネットが根源的に抱える問題点

2012/03/01 16:41

週刊BCN 2012年02月27日vol.1421掲載

 仕事上、さまざまなネットワークサービスをずっと利用してきているが、一般に公開される場への書き込みは、評価アンケートなども含めてほとんど行ったことがない。ネット上で不特定多数の閲覧者が自分の意見や情報を読むという行為に対しては、慎重になる癖がついている。これは私が、インターネットがまだ一般ユーザーに開放される前からビジネスで利用していたからであろう。ネットワーク利用のマナー遵守は昔は普通のことであった。

 現在はブログやTwitterからの発信、発信された情報に対する返信、商品やサービスの評価、もろもろの質問に対する回答など、このような場に参加して意見を述べる人が非常に多いことについては、よい意味で感心している。しかし、ブログの炎上とか、暴言投稿の応酬など、利用者の資質について考えさせられる場面があまりにも多い。このような場合に発端となっているのは、たいてい根拠が希薄で、読者である他人への配慮が不足している情報発信のあり方であろうが、それに対しての攻撃の激しさや執拗さについても私には理解できない。

 ネット上で気軽に意見を述べ合い、情報交換する行為はそれこそがインターネット構築の目的であるが、逆にこのあたりが利用範囲の限界をつくり出す要因となっている。これは最も古くから存在するインターネットの問題点の一つだが、サービスが広がるにつれて加速度的に状況が悪くなっているように感じるのは気のせいだろうか。また、最近は(でもないか)、ステルスマーケティング行為によるなりすまし意見の横行が加わり、企業がインターネットを詐欺行為の道具に使うという許しがたい状況も拡大している。これは情報交換の社会インフラとしての役目が崩れていく前兆かもしれない。このような行為に出た企業は自らインターネット上のビジネス環境を壊しているのだから、個人の暴言とはまったく質が異なる。彼らをインターネットから締め出すくらいの法規制はあってもよいと思うが、考えすぎだろうか。

 このままの状況が続けば、使い勝手は多少制限されるものの善意によって運用される信頼性の高いインターネットと、何でもありですべて自己責任で運用されるインターネットの二つの世界に分離される可能性もありそうだ──などと思いながら、「Facebookの個人情報管理は、きちんとやってね」と唱えつつ、時々、古い友人探しをしている。
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