視点
エネルギー政策のベストミックスは何か
2012/02/16 16:41
週刊BCN 2012年02月13日vol.1419掲載
2010年6月に経済産業省から発表されたエネルギー基本計画では、2030年にエネルギー自給率を現在の38%から70%以上に上げることを目標に、53%を原子力発電、19%を再生可能エネルギーから調達する計画となっていた。今後20年間でこの割合を再設定して、どういうロードマップを作成し具現化するかというところが論点である。
実際に、原子力発電1基を太陽光発電で賄うとどのような規模・コストになるのか算出してみたいと思う。原子力発電1基は約1GWの出力をもっており、年間の設備利用率が現行では60%とのことだから、年間5.2テラワット時の電力供給を行うことができる。
一方、住宅に設置されている太陽光発電の平均設置出力は4kWである。1軒あたりの年間発電量を4400KW時とした場合、原子力発電1基分と同等の電力供給を行うとすると、約120万世帯(4.28GW分)に太陽光発電装置の設置が必要となってくる。1軒あたりの設置金額を200万円と想定すると2.4兆円となる。また、太陽光発電において安定的に電力供給を行う場合には、蓄電池の設置が必須となってくるだろうし、分散発電の制御のために送電網・スマートメーターの整備や、HEMS(Home Energy Management System)の導入も必要となってくる。
参考までに、脱原発の方針を打ち出した再生可能エネルギー先進国のドイツにおける太陽光発電導入状況は、2010年で約7GWが新設され、累計総出力は17.2GWとなっている。先ほどの計算に当てはめると、すでに原子力発電3.6基分に相当する電力供給能力をもっている勘定になる。
今後のエネルギーの安定供給と安心・安全な生活環境づくりのベストミックスは何なのか、どの分野の技術革新を進め、産業創出・雇用増加をしていくのかが、重要な判断・決断の基準となる。そういう意味で、今年決定して発表されるであろうエネルギー基本計画とともに、7月に施行される再生可能エネルギー特殊措置法案の具体的施行内容から目が離せない。
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