視点
年金制度・税法の改正が意味するもの
2012/02/02 16:41
週刊BCN 2012年01月30日vol.1417掲載
マッチング拠出と同時に、加入資格年齢の引き上げも可能となり、65歳まで日本版401kに加入することができるようになる(施行日は未定)。また、生命保険料控除も改正され、新しい制度では、「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」に加え、「介護医療保険料控除」が新設された。控除額も、従来の最高10万円から、3種類の保険をあわせた控除額が、それぞれ最高で4万円、合計12万円にアップされた。この一連の改正の裏には何があるのか。いずれも、税法上の優遇措置を受けられる制度であり、財源不足にあえいでいる国にとっては不利な改正である。
まず、確定拠出年金制度の改正は、あきらかに公的年金制度の支給開始年齢の引き上げをにらんだ改正といえる。昨年、支給開始年齢の引き上げを持ち出したが、世論の猛反発もあって先送りした。しかし、年金財政が危機的な状況にあることは間違いないので、いずれ支給開始年齢の引き上げが行われるであろう。また、生命保険料控除の見直しは、今後増える一方の医療費の負担などを自助努力で賄えというメッセージとも受け取れる。
健康保険料も、現在の平均9.5%程度から、4月からはついに10%を超える改定が予定されている。保険料の引き上げだけではいずれ追いつかない状況になってくることから、病院等で受診した際に支払う一部負担金の割合も3割を維持することは困難になってくるものと思われる。
このような改正の一方で、通常国会では、消費税のアップをはじめ、さまざまな負担増が予定されている。社会保障制度の抜本改革は、急務の課題であり、勇気をもって取り組んでもらいたいと思う。しかし、国民の素直な感情としては、国会議員の定数削減や公務員の人件費の削減、行政のスリム化などとセットでやってもらいたいというのが本音ではないだろうか。
与党・野党問わず、日本の重大な分岐点ということを認識して、痛みをみんなで分かち合うことができる改正を期待する。
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