視点

ITは「賢い社会」をつくる道具

2012/01/05 16:41

週刊BCN 2012年01月02日vol.1413掲載

 2012年は、「賢い(スマート)社会」をつくる道具としてITの役割の重要性が増すと推測している。これまでITのメリットを享受してこなかった産業界や社会インフラにITが浸透するほか、新しい使い方が生まれる。この「賢い」という言葉を“ITを売る”立場で製品・サービスに落とし込むと、キーワードが浮かび上がる。それは、「ビッグデータ」「スマートフォン/タブレット端末」だ。

 このうち「ビッグデータ」は製品・サービスではなくマーケティング用語にすぎない。「スマートフォン/タブレット端末」は機器にすぎず、単体では法人顧客を「賢くする」ことなどできない。だから、ひと工夫が必要だ。ビッグデータとスマートフォン/タブレット端末。言葉が先行したクラウドコンピューティングと同じく、これから先、キーワードになるのは間違いないが、ひと手間かけなければ売り物にならない。2012年は、その方法を練る期間となるだろう。

 調査会社の米IDCによれば、企業などで生成される新規のデータ総容量は、2011年に1.8ゼッタバイト(1.8兆GB)、2020年には35ゼッタバイトまでに膨張する。構造化データに加え非構造化データの容量が増していることなどが要因だ。このデータを保管する場所として、ストレージなどの需要が高まる、という単純なロジックではない。どんどん生成されるデータをリアルタイムに分析するといったことが、社会を賢くする可能性があるのだ。

 例えば、交差点にある信号機。いまは1機ごとに制御盤があり、人間が交通量を計算して、点滅のタイミングを変えている。だが、これを自動車が発信する信号を捉えてデータを蓄積し、解析したうえで、市中の信号機を一度に最適化できたら渋滞を緩和することができる。東日本大震災後、とくに被災地では、こうしたモデルを使った「スマートシティ」の構想が始まった。

 スマートフォン/タブレット端末は、パソコン黎明期と同じく、個人利用からブームが起きて、パソコンよりも早く法人利用が増えている。しかし、どんな用途に適していて、どんな通信を使えば快適で、法人利用だと端末のOSごとにどんな課題があるのか、あるいは、ユーザー目線ならば誰が売って、どのベンダーが得意なのか……。IT業界はまだ整理されていない状況にある。近年、企業の「ワーキングスタイル」は大きく変化した。その用途に応える機器として、需要が期待できる。クラウドのように安いITを手軽に使うだけでなく、ITは安く「賢く」使う時代に突入する。その元年が2012年なのだ。
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