視点

モバイルアプリケーションとUIで差異化を

2011/11/10 16:41

週刊BCN 2011年11月07日vol.1406掲載

 auユーザーには朗報で、ソフトバンクユーザーには動揺を与えたであろう注目のイベント、iPhone 4Sが発売された。技術規格が異なるので単純比較はできないが、場所やユーザーの多い少ないによってつながりやすさはどちらが優位ともいえないという実験結果をさまざまな媒体が提供している。つまり、単純に回線だけの問題だけでなく、同じプラットフォームの端末を選べるとなれば、端末以外の要素での差異化が必要になってくるということだ。

 端末の処理スピードの速さは世代が変わるごとにどんどんアップする。とはいえ、企業利用となると話は別で、単純に処理スピードの速さだけでなく、セキュリティの堅牢性などに加え、これらのモバイルデバイスに最適化されたアプリケーションが提供されるかどうかに尽きると筆者は考える。

 複数のプラットフォームに対応するために、単純にウェブアプリケーション化された画面をモバイルでも見せるという考え方もある。だが、狭い画面の中で、既存のウェブアプリケーションを見たり、画面をタッチ、フリックして業務処理を行うことは、年配の方を中心に、できれば避けたいと思っているはずだ。この点がアプリケーション開発者にも、企業の情報処理部門の担当者にも理解されておらず、本質的にモバイル利用が進まないボトルネックとなっているともいえる。企業にとってモバイルでの利用はそれに相応なアプリケーションとセットでなければ普及が進まないのだ。

 また、iPhoneがコンシューマ市場で圧倒的な支持を得ているのは、そのユーザーインタフェースのつくり込みが、使えば使うほどユーザーをロックインするという秀逸なモデルになっているからだ。例えば企業環境で使おうとした際にも、ユーザーは個人利用している端末と遜色ないデバイスであってほしいと願うはずだが、現在のAndroidデバイスはそこまでいっていないし、iPhoneも複数キャリアから出てしまった都合上、それらを差異化するのは難しいといわざるを得ない。今後、アピールがいっそう進むWindows Phoneと合わせて、どのようなアプリケーションとユーザーインターフェースを提供すれば企業ユーザーが使いやすいかを真剣に考え、実装するタイミングが到来している。

 この稿の終わりに、創造的で革新的な市場を創り出したスティーブ・ジョブス氏のご冥福をお祈りする。
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