日本IBMの中堅市場戦略
<連載・日本IBMの中堅市場戦略>第13回 協業事例 クオリカ(下)
2011/11/02 20:29
週刊BCN 2011年10月31日vol.1405掲載
IBMの支援制度を活用し、難なく開発
日本IBMは、クオリカが「IBM i」対応版を開発しやすくするため、まず開発環境・動作検証のための設備をクオリカに貸し出した。「当社がもつ開発環境では、対応できない部分があった」(荒河睦美・アトムズキューブ室担当部長)ためだ。日本IBMは、同社製品で動作するソフトをITベンダーが開発しやすくするための「バーチャル・ローナー・プログラム」と呼ぶ支援制度を運用している。IBMのサーバーやソフトを遠隔地から利用できるプログラムで、 日本にいながらにして、海外にあるIBMの環境を使うことができる。クオリカは、この制度を利用して開発・検証環境を整備した。開発段階では、すぐに提供できる環境が日本になかったので、米ダラスの環境を活用。その後、検証段階で東京の設備を使用した。荒河担当部長は、「海外の設備をVPN(仮想プライベートネットワーク)を通じて利用することで、効率良く開発ができた。こうした環境がなければ、リリースできる日程は遅れていたはず」と語っている。
こうしたプロセスを経て、サーバーに「IBM Power Systems」、OSには「IBM i」、ミドルウェアに「WebSphere」と「DB2 for i」を採用した「AToMsQube」が予定通りに完成。今年6月に「AToMsQube IBM i版」として日の目をみた。
日本IBMとクオリカの協業は、開発分野だけにとどまらない。リリース後、両社はユーザー企業とITベンダーそれぞれに向けた販売促進活動でも協力している。パートナー企業向けのセミナーを開催したほか、12月6日には渋谷にあるIBMの施設で「IBM Power Systems」のユーザー企業向けイベントを予定している。ウェブを通じたプロモーションも実施し、今秋から販売促進施策を共同で行う予定だ。
クオリカにとっては、慣れていない開発環境でのチャレンジだったが、日本IBMが用意した支援制度のもと、無事に製品を開発、リリースすることができた。日本IBMは自社製品で動く競争力のあるシステムを用意することができた。お互いにとって“Win-Win”の関係を築いた好事例といえる。(木村剛士)
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