関西のITベンダーの「今」そして「これから」

<関西のITベンダーの「今」そして「これから」>第7回 関西発の中堅SIerの動き(後編) 医療系システムに力を注ぐ 大学と連携した製品開発も

2011/11/02 20:29

週刊BCN 2011年10月31日vol.1405掲載

 関西地区の中堅ITベンダーは、事業の成長が見込める新しい分野の一つとして、医療系システムや健康管理サービスの提供に着目している。ソフトウェアの受託開発など従来型ビジネスの売上減少を補うべく、医療機関向け展開の拡大を推進している。中堅ベンダー2社をモデル事例として、その取り組みを紹介する。

アルカディア・
システムズ
小幡忠信社長
ベストライフ・
プロモーション
上田耕司取締役
 関西地区を中心としてビジネスを展開する中堅クラスのシステムインテグレータ(SIer)であるアルカディア・システムズは、新しい事業領域の開拓を目指して、医療機関向けシステムの開発・販売に力を入れているところだ。同社は、売り上げの約7割を、企業向けネットワーク構築とソフトウェアの受託開発といった従来型ビジネスが占めている。「しかし、関西のユーザー企業は今、ネットワークや基幹ソフトへの投資を抑えているので、これまでと同様の事業を展開するのが難しくなっている」(小幡忠信社長)という状況にあって、新規ビジネスを立ち上げることに必死だ。

 小幡社長が着目しているのは、ベッド数が300以上の大手病院だ。関西地区では、高齢化などによって、医療機関向けシステムの需要が拡大しており、電子カルテなどを実現するシステムの提供が、中堅ITベンダーにとって開拓の余地がある事業分野となっている。アルカディア・システムズは、「すでに動いている案件を通じて、大手病院のニーズを詳しく把握し、ソリューションの標準化を図って横展開する」(小幡社長)という戦略によって、2014年をめどに、医療機関向けのシステム開発・販売の売上比率を35~40%に引き上げる方針だ。

 医療系のIT市場は、病院以外にもさまざまなターゲットがある。富士通の100%子会社で、大阪府枚方市に関西事業所のオフィスを構えているベストライフ・プロモーション(齋藤稔社長)は、健康管理システムやPHR(個人健康記録)データベースを商材として、事業領域の拡大を推し進めている。ベストライフ・プロモーションは現時点で、富士通向けのビジネスが売上構成の大半を占めているが、今後は、幅広い業種の企業や健康保険事業者を重点的に狙い、富士通向け以外の事業を強化する。

 取締役の上田耕司氏は、「企業や健保事業者は医療費の高騰に直面しており、コストの抑制を喫緊の課題と捉えている」とみて、ITを活用した健康管理や肥満対策などを商品化することによって、市場の開拓に取り組む。ベストライフ・プロモーションは、大阪府枚方市のオフィスのすぐ近くにキャンパスをもつ関西医科大学とのパイプを太くしており、ITソリューションの共同開発に注力する。(ゼンフ ミシャ)
  • 1

関連記事

<関西のITベンダーの「今」そして「これから」>第6回 関西発の中堅SIerの動き(前編) 新しい事業を急ピッチで開拓 従来型SIからサービスにシフト

<医療市場特集>進化を求められる 医療IT市場 医療機関の連携が必須に