視点
「統合型パソコン」と「iPad」の類似性
2011/09/29 16:41
週刊BCN 2011年09月26日vol.1400掲載
7月下旬、そのiPad 2が教員にも配布された。学生と同じく、無償貸与で、通信料金は大学負担である。昨年購入したiPadは、Wi-Fiモデルだったので、基本的に自宅に置いたままだが、今回は3Gも付いているので、どこでも使える。実に便利だ。授業のためのコンテンツ作成や授業管理、成績管理など大学の仕事や、原稿作成などにはパソコンを使っているが、それ以外の用途では、パソコンを使うことが少なくなった。iPadでほとんどの用が足りる。一度充電するとほぼ10時間利用できるそうだが、今の使い方だと、1週間程度は大丈夫だ。どこにでも持ち運べ、スマートカバーを開けるとすぐ立ち上がる。セットアップの手間もほとんどなく、トラブルも起きない。
iPadの長所を列挙していたら、「統合型パソコン」というコンセプトを思い出した。「統合型パソコン」とは、オープンなモジュールでつくられているパソコンとは異なり、そのハード、OS、主要アプリケーション、通信機能を統合化したパソコンで、利用できるアプリケーションや周辺機器が限定されている。その代わり、安定性や使い勝手、セキュリティが飛躍的に高い。「統合型パソコン」の詳細は、慶応義塾大学経済学部の田中辰雄先生の著書『モジュール化の終焉』(NTT出版、2009年12月)を読んでいただきたいのだが、その基本的なコンセプトはiPadとほぼ同等である。
田中先生は、この「統合型パソコン」の市場性を確かめるため、2007年にコンジョイント分析を実施している。このコンジョイント分析の結果は、『モジュール化の終焉』に詳述されているが、仮に従来のモジュール型パソコンと同価格であったとして、立ち上げ3秒、設定済み、トラブルなしの「統合型パソコン」の市場シェアは約4割だった。
「統合型パソコン」のコンセプトとコンジョイント分析の結果は、2007年に日本のある有力パソコンメーカーに持ち込まれたのだが、製品化されることはなかった。実に残念なことである。
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